第486話 絶対絶命

「よしっ、じゃあ突撃だっ!」

 康生のかけ声とともに、ザグ達は一斉に兵器に向かって飛び出す。

「なっ……!?」

 兵器の周りを防衛していた兵士達は突然のことに驚いていた。

 隙をついての強襲。一気にかたをつけるためにザグ達は一直線に敵兵を無効化しようとする。

「怯むなっ!すでに我々の勝利は目前だっ!愚かな化け物共を殲滅せよっ!」

 しかし怯んでいたのも一瞬。

 指揮官の声によってすぐに威勢を取り戻す。

「俺達も怯むなよっ!この戦い次第で俺たちの未来が大きく左右されるぞっ!」

「分かってるよぉっ!」

 だが康生達も負けてはいられない。

 兵器が発動してしまえば、異世界の半分が壊滅してしまう。

 リリスが人と異世界人の平和のために頑張っている中、水を差すわけにはいかない。

 異世界を守るためにも、ここが正念場だった。

「一気に行くぞ!お前らっ!」

「「「おぉっ!」」」

 ザグの指示で異世界人達はそれぞれ魔法を発動し、一気に敵兵につっこんでいく。

 康生も負けじと風の力を使って、敵の懐まで一瞬で移動する。

「大人しくしてろやぁっ!」

 まずザグが戦陣をきって大きな蹴りを入れる。

「怯むなっ!」

 しかし敵兵も負け時と魔法を発動する。

 中には複数人で魔力をあわせるものもいた。

「後方の奴らに注意しろっ!でかいの来るぞっ!」

 大量の魔力が込められているのを察知した康生はすぐにザグ達に知らせる。

 その時、ザグ達に向かって風の刃が吹き荒れた。さらに風に混じって炎の刃までが辺り一帯に吹き荒れた。

「そんな大雑把な魔法が俺達異世界人にあたるわけねぇだろっ!」

 縦横無尽に切り裂き、燃え広がる刃に向かって異世界人達は一斉に飛び込む。

「おらおらっ!」

 だがザグ達は刃に切り裂かれることも、燃えることもなく的確に敵兵を狙って攻撃を放つ。

「なっ!?」

 魔法が全て回避された光景を見て敵兵が一瞬、怯んだ表情になる。

「魔力の流れが見え見えなんだよっ!」

 怯んだ隙にザグ達は一斉に攻撃を仕掛ける。

 これが異世界人と人の違いだ。

 いくら魔法が使えようとも、長年魔法に慣れ親しんできた異世界人達と比べれば明らかにザグ達に利があるのだった。

「本物の魔法って奴を見せてやるよっ!」

 お返しと言わんばかりにザグ達は一斉に魔法を放つ。

 巨大な風の刃。敵兵一人一人に向かって確実に飛んでいく火の玉。敵の足下を絡みとり動きを封じる蔦、等々。

 流石熟練と言うべき精錬された魔法が敵兵に一気に襲いかかる。

 恐らく瞬時に制圧するために本気を出しているのだろう。

 本当に一瞬で敵兵が殲滅されていく。

 そんな光景を誰もが思い浮かべた。

 しかし、


「ふっ、かかったな」


 絶体絶命の中、指揮官は笑みを浮かべたのだった。

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