第481話 足音
「くそっ!不味いんじゃねぇか康生っ!?」
「そうだなっ……!」
また一人、ザグ達の味方が離脱する。
死闘の末、十人もいたザグの部下がすでに五人まで減っていた。
敵の戦力はそれほど強く、厄介だった。
「くそっ!この程度の魔法なんかによぉっ!」 苛立ちを隠せないまま、ザグはひたすら敵を倒していく。
あくまでも敵は魔法を使ってくるが、それでも魔法の技術はそこまでのものだ。
一朝一夕で操れるほど魔法は簡単ではないことは康生が一番よく知っている。
だからこそ敵の攻撃は単純で、康生やザグ達は一つ一つの対処自体はなんとか出来てきた。
問題は数だった。
いくらザグ達の方が強くても敵の数が大きければ、魔法の数が多ければ全ては回避することは容易ではない。
それでも康生達はここまで頑張ってきた。
康生自身、力を全て出し切るわけにはいかないので、セーブしながらの戦いだが、それでもかなり消耗しきっていた。
「おいっ康生っ!お前はもう休んだ方がいいんじゃないかっ?」
次々と敵が押し寄せてくる中、ザグは康生の疲れた様子を見る。
「何言ってるんだよ、俺がやらなきゃだめなんだよ。それに俺がいなくなったら状況はさらに悪化するだろうがっ」
「だが、おめぇは最後の切り札なんだろっ?力を温存しておかないといけないんじゃないのかよっ」
お互い戦闘に集中しながらも、口論を交わす。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろっ」
「いやっこんな時だからこそ戦力はとっておかないとだめなんじゃないのかっ!」
エル達から康生のことを見ているよう言われて手前、そしてザグ自身の康生も力を知っているからこそ、こんなところで消耗させるべきではないと判断したのだろう。
しかし頑固な康生だ。
まだ敵がいるのに一人だけ退散することは出来ない。
力がまだ十分ある手前、尚更出来ないだろう。
「おいっ、奈々枝っ康生はこのままでいいのかよっ」
このままでは埒が明かないと判断したザグはすぐに奈々枝に連絡をとる。
「おいっ、お前連絡とるのはなしだろうがっ」
「へっ、てめぇが自己管理出来ないからだよっ」
まるで駄々をこねる子供のように康生はザグにつっかかる。
『大丈夫ですお兄ちゃんっ』
しかし奈々枝からはそのまま維持するように言われる。
「ふぅ……よかった」
戦場から下げられてしまうと考えていた康生は奈々枝の言葉を聞き一安心する。
『あとほんの少しで援軍が到着しますのですぐに交代してもらいますので。だからそれまでの間頑張ってくださいねっ』
と奈々枝からの通信が終わると背後の方から大きな声と共に複数の足音が聞こえてきた。
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