第479話 液晶

「――ちょっと待ってください!」


 突如会議室に男の声が響き渡る。

 人間の対応について各国の王達が対応を指示している中、突然の声に誰しもその動きを止めた。

 その場は一瞬の静寂に包まれる。

「なっ……!」

 真っ先に静寂を破ったのはリリスの声だった。

 皆の視線の先には一人の男、そして左右に二人の女性が立っていた。

「突然すいません。我々はリリス様の国と同盟関係を築いている者達です」

 そう言って――上代琉生は頭を下げた。

「ど、どうしてお前がここに……?」

 上代琉生の登場に一番驚いているのはリリスだった。

 恐らく敵達と戦っているのだと思っていたのだろう。

 それがまさか異世界の、しかも会議室に来るなんて思いもしなかっただろう。

「同盟関係だと?もしかして貴様らは人間か?」

 各国の王達は上代琉生の言葉にそれぞれの反応を返す中、一人の王が疑いの眼差しを向けてくる。

「はい。私は正真正銘人間です。まぁ、隣にいる方は異世界人ですが」

「……ん?確かに貴様は見たことあるぞ。確かリリスのとこの……リナと言ったな」

 リナさんの顔を見て、何人かの王が反応した。

 リリスの元で隊長を務めていただけはあり、その顔は各国にも知られているようだった。

「そうか。貴様等は例の奴らか。人間などと我々の仲間が一緒に暮らしているという……」

 どうやら康生達の存在は異世界の中でも知られているようだった。

「それで、その人間がどうしてここにいるのだ?」

 会議室にさらなる動揺が広がる中、一人の国王が尋ねる。

「それはですね、皆様に今、異世界へ攻めに来ている者達の説明をさせていただきたく思ってこさせていただきました」

「説明だと……?」

 ついさっき軍隊の報告を聞いたばかりの中で、まるでタイミングを見計らっていたかのように上代琉生はゆっくりと会議室の中を進む。

「現在、敵兵は異世界に向けて進行しています。それを今、我々の部隊が食い止めている状況です」

 上代琉生はゆっくりと進みながら、会議室に設置された液晶を指さす。

「ほぅ……」

 いつの間に準備をしたのか、液晶には現在の戦況の状況が詳しく書かれていた。

「敵の数は現状半数まで減らすことが出来ましたが、こちらも損傷が激しく長期化している状況です」

「もしや貴様は自らの手柄を言ってるわけではないか?もしそうなら無意味だぞ。そなたらの力など証明されても我らにかかればそれは小さなものよ」

 戦況報告を聞いた一人が、冷めた視線で上代琉生をみる。

「些細……ですか」

 他の王達も同様に上代琉生に非難や蔑んだような視線を向ける。

「果たしてこれを見てもそう言えますか?」

 だが上代琉生はそれらの視線をものともせず、再び液晶に指をさすのだった。

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