第476話 嫌悪
「ぐっ……!」
ザグが攻撃を食らってしまい、わずかながらに動きを止める。
「大丈夫かザグっ!?」
ザグの動きが止まったことで康生はすぐにフォローに入る。
「だ、大丈夫だっ!」
しかしザグはすぐに体勢を戻して反撃する。
「くそっ!てめぇら一体どうやってそれだけの魔法を手に入れたんだよっ!」
そう言ってザグは一気に敵を吹き飛ばす。
だがすぐに敵の魔法部隊がザグ達に襲いかかる。
一人一人の魔法の強さはそこまでだが、数が重なればそれほど力は大きくなっていく。
中には複数で同時に魔法を使ってくるものも現れ、一人一人の対処に苦労しているようだった。
ザグ自身はそこまで魔法に頼らずに己に肉体に頼りながらの戦闘スタイルだが、それでもこれほどまでに長期戦では集中力も魔力も切れてしまいかねない。
実際、ザクの部下達も何人かはここまでくる最中に負傷し、脱落している。
「まさかこれだけの人数が魔法を使えるなんて思ってもなかった」
そして康生もその数の多さに驚いているようだった。
「そもそもどうして人間が魔法を使えんだよっ。お前も含めて一体どうなってやがんだよっ」
人が魔法を使用しているという事実に、やはりザグは疑問を抱かずにはいられないようだった。
「俺に関してはなんともいえないけど、敵達は特殊な手術をしているみたいだ。体の中身をいじって魔法を使えるようにしているみたいだ」
「へっ、やっぱ人間は知能だけは高いみたいだなっ!」
ザグから質問を受けた康生は、上代琉生から聞いた情報をそのまま話す。
「だがそれならお前もそうなんじゃないのかっ?」
その話を聞いたザグは、すぐに康生に疑問を向ける。
「俺は……正直分からない。そんな手術は受けた覚えもない。だから分からない……」
「へっ、そうかよっ」
初め、康生が魔法を使えることについても同じようなことだと推論できたが、でも康生には身に覚えのないことだった。
決戦前ということもあり、その事実については深く考えることなく現在に至るというわけだ。
「だが、そんな無理矢理なことして人体に影響は出ないのかっ?」
さらにザグは、手術という単語を聞いて嫌な想像を働かせる。
「……話によれば適合できる人間と出来ない人間がいるらしい。適合できた場合は今のところ悪い影響は出ていないみたいだ」
「適合できなかったらどうなるんだ?」
「それは……」
とそこで康生は口をつぐむ。
「まさか……?」
ザグは康生の様子を見て察する。
「成功確率は低いはずなんだ。だからこそこれだけの数がいることに俺は正直驚いている」
と、康生はそれだけ言った。
「けっ、胸くそ悪い話だぜ。こりゃ、よほど性根の腐ったやつらみたいだな」
ザグは敵に対して初めて嫌悪の感情を示した。
「そうなればここでこいつらを倒さねえといけねぇなっ!」
そう言ってザグはさらにやる気を出すのだった。
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