第469話 指示

「全軍!砲撃開始っ!」

 そのかけ声で一斉に銃声が響く。

 突然響いた銃声に敵兵は一気にざわめく。

 一体どこから。

 敵兵はすぐに視線をさまよわせて辺りを見渡す。

 が、周りにはどこにも人影はない。

 では一体どこから?

 そう敵兵が考えた瞬間、突然敵兵の意識が途絶える。

「ど、どうしたっ!?」

 その様子を見た指揮官は慌てるように声をあげた。

 しかしその声に誰も答える者はいない。

 否、答えようとも意識が途絶える者もおれば、状況が全く分からない者もいる。

 そんな突然の混乱の中、康生は一気に前進する。

 康生の周りにいた敵兵はもうほとんど意識が途絶えて倒れていた。

 しかしそんな中、康生だけが意識をはっきりともって足を進める。


「第二射!砲撃開始っ!」


 そしてそんな状況下、上代琉生はさらに指示を飛ばす。

 すると先ほどと同様辺りから銃声が響きわたる。

「……空かっ!?」

 すると二度目の銃声を聞いて何かに気づいた指揮官の一人が空を注視する。

「いたぞっ!敵は空だっ!」

 そして指揮官はすぐに声を張り上げて空中を指す。

 空中には指揮官の言った通り、なにやら黒い影があちこちに点々としていた。

「なるほど空かっ。しかし、この状況は……?いや、そういえばあの反逆者共は麻痺薬といった薬を使用すると情報が……」

 次々と倒れていく兵士を見て指揮官は何かに気づきすぐに拡声器を使用する。

「皆の者!すぐにガスマスクを着用せよっ!敵は怪しいガスを使用している可能性あり!ただちに着用後!空中にいる敵兵をすぐに殲滅せよっ!」

 その一瞬の判断で、指揮官は的確な指示を出す。

 まだ混乱の最中にいる中、戸惑いながらも指揮官の指示に従う。

「おいっ!敵が気づいたぞっ!」

「分かっます!すぐに次の作戦に移行させますよ!」

 敵兵が空中の敵に気づいたことを康生は上代琉生にすぐに知らせる。

 だが上代琉生はすぐに次の作戦へと移行させる。

「英雄様は引き続きお願いしますね!ただし力は温存しておいてくださいっ!」

「分かってるっ!」

 それだけ無線で会話をした後、康生は再び敵兵の中につっこんでいった。

「よし、それじゃあこっちもやりますよ」

 康生がつっこんでいくのを見た上代琉生はすぐに皆に指示を飛ばす。

「隊長っ!私達も到着したよっ!」

 そしてそんな中、奈々枝率いるザク達の部隊が上代琉生の元へ合流した。

「奈々枝かっ。今まで助かった!お前達はその異世界人達を率いて康生の元へ向かってサポートしてくれ!」

「おぉっ!分かったっ!」

 上代琉生の指示を聞き、ようやく暴れられることを知ったザグはやる気満々の様子だった。

「分かった。じゃあいくよ皆っ!」

 そうしてザグ達は康生の元へと向かったのだった。

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