第446話 甘い

「魔力量があがってるっ……!?」

 炎の竜巻を見て康生は驚愕の表情にそまる。

 その魔法は異世界人達ですら容易に使うことができないほどのものだった。

「死ねぇっ!康生っ!!」

 そして炎の竜巻と共に、剣の男が自身に雷を打ち付け、雷鳴の速さで康生に迫る。

「ぐっ!」

 康生は咄嗟に『解放』の力を使って攻撃を回避する。

 いくら防御面をあげたからといって、今の攻撃を一撃でも食らえば跡形もなく消し飛んでしまうことが容易に想像できた。

 それほどまでに強力な一撃だった。

「お前っ!そんなことしていると身を滅ぼすぞっ!」

 しかしその力は強大さ故に身を滅びしかねないものだった。

 みると、剣の男の体は魔法の威力に耐えかねて全身のいたるところが黒く焼け焦げていた。

「そんなことは知らぬっ!我々は貴様さえ殺せればそれで満足だっ!」

 そう言うと同時に剣の男は再び攻撃を仕掛ける。

「俺達も忘れるなよっ!」

 剣の男の攻撃に集中しすぎたせいで、康生は他の場所に注意がかけていた。

 なので炎の竜巻の急激な接近に気づくのが少し遅れる。

「お前達もかっ……!」

 見ると斧の男と槍の男はそれぞれ竜巻の中心にいた。

 まるで全身の魔力全てを放出するかのように竜巻を形成していたのだ。

 流石の康生もこれだけの竜巻にすぐに対応することはできない。

 できることならば回避するのが一番なのだが、それができない理由があった。

「おらおらおらおっ!」

「はぁっ!!」

 今度は剣の男に混じって、鞭と銃の男が接近してきていた。

 銃の男は銃弾に風を乗せてさらに速く、そしてリロードすることなく打ち続けていた。

 そして鞭の男も同様に全身の炎を至るとこにまき散らす。

(こいつらっ……味方に攻撃が加わろうがおかまいなしかっ……!)

 頭が狂っているとしか思えない光景に康生は理解ができずにいた。

 そうまでして自分を殺そうとしてくる隊長達が恐怖でしかたなかった。

 しかし、康生は逃げるわけにはいかない。

「俺はおまえ達を殺すわけにはいかないんだよっ!」

 今の康生ならひたすら逃げ続けることは可能だ。

 それこそ空中に逃げればよい。

 そうしていれば隊長達は命を燃やし尽くして死んでしまう。

 でも今の康生はそれはできない。

 何故なら、

「エルとの約束のためっ!そして俺達の夢のため!お前達を殺さずに勝ってやるっ!」

 康生の目の前の畏怖の対象に向かって叫んだ。

「殺さないだとっ!?舐めているのかっ!そんな甘い覚悟で我々と戦っているというのかっ!!」

 だがそれがさらに隊長達の闘志を燃やす。

 隊長達はもう説得できない。それこそ、今の力は制御することすら不可能だろう。

 だからこそ康生がなんとかしないといけない。「甘くないさっ!俺達はいつも本気だっ!だから覚悟しておけよっ!」

 そうして康生は決意を決めて隊長達に向き合うのだった。

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