第410話 暴走
「……すいませんでした」
広場中央に建つ建物の中の会議室。
そこではこの中央都市の主要メンバーが集まっていた。
そして、そのメンバー達全員に睨まれて頭を下げているのは康生だった。
「ほんとうにすいませんでした……」
深々と頭を下げる康生は、英雄と呼ばれる姿の見る影もなかった。
「ほんとっ、迷惑かけるんだからっ」
そして案の定、エルは康生を見下ろしながらもぷんぷんと頬を膨らませる。
「ほんとだ。これは明らかにお前が悪いぞ康生」
そしていつもならかばってくれるはずの時雨さんまでもが康生を見下ろす。
「全く……少しは状況を考えろ」
「そうですね。英雄様はいささか周りを見る力がないですね」
さらに畳みかけるようにリナさんと上代琉生が交互に話す。
「うぅっ……」
皆から口々に言われた康生も流石に反省したと様子で顔をあげず、ただじっと頭を下げ続けていた。
『まぁ、ご主人様は引きこもりですから。周りが見えないのは当たり前です』
「うっ!?」
そして最後の最後にAIが弱った康生のとどめをさしたのだった。
事の顛末はこうだ。
敵が来るが一週間後と知った皆は、それぞれ緊張を胸に一人一人すべきことをやっていた。
そんな中、康生も当然力をつけるべく特訓をしてたのだ。
しかしその特訓が不味かった。
いくら中央都市から距離をとったといえど、新たな力の威力は絶大すぎたのだ。
強力な力は次第に地面を大きく揺さぶり、結果中央都市全体に地震のようなものが襲ってきたというわけだ。
上代琉生の部隊も含め、時雨さん達はすぐさま兵と共にその場へと向かい、康生を目撃した時には呆れて何もいえなかったという。
「しっかし、まだ強くなりますか英雄様は」
流石にこれ以上は時間の無駄になると判断した上代琉生は、早速康生の新たな力について情報を得ようとする。
「あ、あぁ。俺も正直かなりびっくりしてる」
そこで康生はようやく頭をあげた。
「全く……お前には本当にいつも驚かされてばかりだな」
怒りから呆れる表情に変わったリナさんは小さなため息を吐いた。
「全くだ。現場を見に行った時は本当に度肝を抜かしたぞ」
時雨さんもまた、驚き半分、呆れ半分といった表情で康生を見る。
「それで、今度はいったいどんな力なの?」
しかしエルだけはそのどれとも違い、康生を心配するかのよな表情でのぞき込む。
「え、えっと……エルとリナさんに分かりやすくいえば魔力暴走の力を少し使ってみたって言ったらいいかな?」
「えっ!?」
「なんだとっ!?」
しかし次の瞬間、康生から出た言葉にエルとリナさんは驚愕の表情を浮かべたのだった。
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