第406話 会議
「――とりあえず今日はここまでとしようか」
思った以上に長引いた会議は、上代琉生の一言で終わりを迎えた。
「そうね、あんまり遅くなりすぎると皆心配しちゃうからね」
「そうだな」
エルと時雨さんは街の人達のことを心配して言う。
というのも、例の放送は当然街の人達皆が見ていた。
自分達の街が攻められるというのだ。
いくら一度体験したからといって、それに慣れることはなく、当然不安を抱いている。
早く皆に状況を説明しようとエルとリナさんが早速立ち上がる。
「それじゃあ俺も行きますね」
そんな中、会議が終わるや否や康生は急ぎ足で会議室を出て行った。
先を急ぐ様子を見た皆は、それぞれ何やら考えるように顔を見合わせる。
「……康生大丈夫かな?」
「きっと英雄様のことですから、また頑張ってるんでしょうね」
その言葉に皆はそれぞれ思う所があるような顔を浮かべる。
「確かあいつは私に体を鍛えてくれと言ってきたな。なんでも頑丈になりたいとか言って」
「頑丈?康生はもうとっくに体はできあがっていると思うぞ?」
リナさんが思い出したように宴会での出来事を話す。
しかし時雨さんもまた、康生の体が丈夫だと思っているようだった。
「恐らくあいつは私たち異世界達と比べてるのだろうな。だらかこそもっと力をつけようとしていると思う」
流石のリナさんも少し、康生のことを心配しているようだった。
「まぁ、上を目指すことは悪いことではないですからね。それにしても限界がありますが」
「そうね。でも最近の康生はどこが頑張りすぎてるような……」
エルの言葉に皆それぞれ最近の康生の行動を思い出しているようだった。
「あっ……そういえば」
そこで時雨さんが何かを思い出したかように呟く。
「今日、工房に康生を迎えにいった時に康生は何か隠すような仕草をしていた気かするぞ」
放送の件で康生を呼びに行った時のことを時雨さんは思い出す。
「隠す?今更隠すことなんて何もない気がするけど……」
今やっていることを隠したがっているということに、エルを含め皆はなにやら疑問を抱いているようだった。
「AIは今英雄様がやっていることを知ってるんじゃないか?」
考えてもきりがないと判断した上代琉生は、すぐに手元の端末にいるAIに尋ねる。
『ご主人様はいつものように頑張っているだけです』
「そうか」
AIから具体的なことを聞けなかった上代琉生はどこか消化不良というような感じだった。
「まぁ、その件については各々で康生の様子をみるって感じでいいですね。皆さんもそれぞれやることはあるだろうから」
どこか胸の奥につっかえた感じがする中、上代琉生の言葉で今度こそ会議が終わったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます