第23話 白い鎧の女

「そこにいるのは誰だ!」

 しばらくすると康生達の目の前に大勢の人が現れた。

 それらの人々は皆統一された鉄の鎧を身に纏っており、その姿からは軍隊を想像させた。さらにその手には剣、それに盾が装備されていた。

 まさにそれはゲームの世界で出てくる騎士の格好であった。

「――貴様等は一体何者だ?」

 そんな中、一人だけ異彩を放つ格好をしている者が一人。

 そいつは長い持ち手に細長い刀身。長刀のような武器を一つ持っているだけで、他の人と比べ盾のような物は持っていなかった。

 さらに特筆すべきなのはその姿である。他の者とは異なり、白を基調とした鎧を身に纏っている。

 その体は出るところは出ていて、引き締まる所はしっかり引き締まっている所を見るにその人物は女という事が分かった。

「ど、どうする……?」

 いつの間にか近くに来ていたエルが康生にそっと耳打ちする。

「どうするも何も……素直に助けてもらったらいいんじゃないか?きっと皆地下都市とかいう所から出てきたようだし」

「うん……」

 だがエルは少しだけ顔を俯かせた。

 そんな反応を見た康生は遅くながら気付いた。

(そうか、エルは異世界人だからそれが人にばれると中々に厄介な事になるのか……)

 さっきの男でさえあそこまで過剰に反応していたのだ。

 快く受け入れてくれる……なんて事は絶対になさそうだな。

「どうした?私の声が聞こえないか?」

 そんな康生達を見かねて白い鎧の女が再度尋ね掛けてきた。

 その威圧感に押され康生は観念し、ゆっくりと口を開く。

「お、俺達ちょっと迷子になっちゃって……」

「迷子だと?」

 正直康生は内心焦っていた。

 何故ならそんな嘘はすぐにバレると感じたからだ。だってこんな何もない荒野で迷子になっているなんて普通に考えて可笑しすぎる。

 もっといい嘘がつけたらよかったのだがそれはもう後の祭りだ。

 だから康生はじっと反応を観察する。

「――なるほど。大方、勝手に地下都市から逃げ出したのだろう」

 しかし康生の予想に反してその嘘はあっさりと受け入れられてしまった。

「それよりも君達。もしかしてこの男を見なかったか?」

 そう言って差し出されたのは人の顔が書かれていた写真だった。

「「あっ、」」

 そして康生とエルはその写真を見て思わず声をあげた。

 何故ならその写真は先程までいた男の顔にそっくりだったからだ。

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