そいつは電卓から始まった

いわのふ

第1話 電卓なんてとこから、話を始めてしまうが

 もう、この手のハナシ、何度も本に書かれたり番組化されたりもするが、そのたんびに忘れ去られた事実や、新しい世代には伝わらなかった話があったりもするので、あえて書いておく。


 電卓、いまじゃあ安すぎて商売にもなりはしない。


 でもIT機器の普及は電卓からだった。電卓競争をおっぱじめたのは日本の企業で、中でも「ビジコン」という会社が有名である。1970年代初頭、日本では大企業から中小企業まで、電卓を開発しまくっていて、あっという間に価格が下がり始めた。


 「ビジコン」は創業当初は別として、当時は破格の価格で電卓を売る会社になっていた。価格が大幅に引き下げられるきっかけになったのが、「マイクロプロセッサ」の開発である。


 きっかけは、ビジコン社員の嶋正利、という天才がまだいつ潰れるのか分からないくらい弱小だったインテルで、フェデリコ・ファジンと二人で作った世界初(所説ある)のワンチップ・マイコンである。


 このワンチップ・マイコンを武器にビジコンは躍進した。でだ。お役所さまにとっては、目障りな存在になっちゃったわけだよ。


 で、大手の企業に部品供給を制限させた。途端にビジコンは困窮し、世界初のマイコンの特許をインテルに売り渡した。この時点で、役人たちは能無しであったといわざるを得ない。


 いまでもほぼすべてのパソコンにはインテルのマイコンが入っている。CPUと呼ばれている。そして、インテルは巨大企業になっているが、日本人のことは忘れ去られている。


 嶋とファジンが開発したチップはi4004という名前が付けられ、チップのはしっこにはファジンのサインが刻まれた。嶋は悔しいおもいをしたはずで、そのあとの大躍進を引き起こしたチップには嶋家の家紋が刻まれている。


 そのあたりは次回に。





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