フィルター
白櫻詩子
鬱々とした日々
朝起きて一番、"ああ今日も生きてる"と毎朝脳裏に浮かぶ。これは決して生きてる実感や瑞々しいものではなく、ただぼんやりと一日、二十四時間の時間が流れてるなかで、朝を迎えるという一つの区切り。これの繰り返しに途方もなさを感じるからだ。
特に食欲は無くなにも食べないが、異様に喉や口が乾くため水をよく飲む。たまに異様に炭酸が飲みたくなる時があると思う。あれは心が健康な時にしかおこらない。水でいいのだ。
何かをするエネルギーもなくせめてこれくらいはとカーテンを開ける。光が強く眩しいが、これが体には必要だと信じてサングラスをかけてしのぐ。光、匂い、音、肌に触れるちょっとした毛玉や犬の毛などの肌触り、全てに敏感になってしまって一々怯えている。情けない。そんな自分にさらにやるせなさを感じるのだ。
とくに食欲も空腹を感じる事もないのだが、何にもすることが無い(無理くりしてみても興味が湧かないか、頭がぼんやりとして思考のスピードが通常の生活リズムについていかない)ので冷蔵庫を開けてみる。有難いことに家族が買い物を済ませているので適当なものを口にする。とくに美味しいとも不味いとも感じない自分にまた落胆する。
しゃんと椅子に座ろうとすればなんだか体が重く背もたれに寄りかかって脱力したり、何だか落ち着かなくてソファーの背もたれに肘をついて窓を眺めたりする。窓の外を眺めるにはレースのカーテンを開けなければいけないのだか、別に外を眺めたいわけではないので、ただぼんやりと視界に入るカーテンと光を眺める。
本当は休みの日にはあれをしよう、これをしよう、そんなことがいくつもあったはずなのだが、どうにも重たい身体が動かない。頑張って一歩二歩と足を進めてもなんだか身体が重くて座り込んでしまう。ベッドから降りてカーペットに座ってみる。階段を降りたが一番下の段でちょっと一休みしてみる。作業部屋のソファーにもたれかかってみる。デスクの椅子でゆらゆらと揺れてみる。そうやって家中を歩き回っては座り込みを繰り返して我に変える。なにをしているんだ。
そんな事をしているとあっという間に一日が過ぎる、なんて事はなく、まだ一時間やそこらしか進んでいない。だが気付くともう夕方だったりもする。
まただ。またこんな空虚な一日を過ごしてしまった。心がリフレッシュするでもなく、リラックスした瞬間もなく、ただただ時間を揺蕩う様に生命活動をこなした。そんな何もない生活と自分の状態に焦りは募るばかりで、常に焦燥感と疲労感が付き纏う。だから毎日何かに追われるように時間を使わなければと心臓がドキドキして、それがまたなんだか疲れる。そんな一日の繰り返しである。
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