朗報【愛沙視点】
《いまなにしてるの?》
《宿題はじめたとこ、そっちは?》
《私も宿題はじめた》
《そっか、お互い頑張ろうな》
《うん》
康貴とのメッセージ。前はこんな気軽に送れなかったけど、最近はこうやって連絡を取れば返事をくれるようになった。
良かった、と思う。やっぱり康貴と話せなかった期間は結構、寂しかったんだなって気付かされた。
「って違う! こんな他愛のない話がしたいんじゃないのに!」
確かにメッセージが気軽にできるようになったのはいいんだけど! 今日はそうじゃないのに!
「それに宿題してるって嘘までついて……」
絶賛ベッドで携帯を握りしめながら転がってる状況に意味のない罪悪感を感じる。
「はぁ……デート、か……」
そう。莉香子たちが私にしたアドバイスを思い出す。
「デートなんて改まって今更どうやって誘えばいいのよ!」
クマのぬいぐるみに八つ当たりしながら悶ていると隣の部屋から声が聞こえてきた。
「お姉ちゃーん! 良いお知らせでーす!」
「どうしたのまなみ?」
部屋に招き入れるなりクッションにダイブするまなみ。変わってなくて可愛いんだけど、いつになったらおとなしくなるのかという不安はちょっとある。
ただまぁ、いまは良いお知らせというのを聞きたかった。
「あのねあのね! 康貴にぃが泊まりに来るよ!」
「そうなの……?」
なし崩し的にこないだ泊まらせてしまったわけだけど、今回はまたなんで……?
「私がお願いしましたー! 家庭教師、合宿です!」
「合宿……?」
わざわざ泊まり込みで、とも思うがまあ、そのあたりはまなみがゴリ押したんだろうなぁ……。
ごめんね康貴。
「で、何日いるの?」
「んー、2泊、か、3泊?」
結構長かった。それに……。
「なんで決まってないの……?」
「えーっと……私の宿題が終わるまで、だから?」
なるほど……。まぁ早めに全部終わらせるのは偉いからいいけど、付き合わされる康貴は……。ま、いいか。なんだかんだまなみといるのは楽しそうにしてくれているし。
「それでね。お母さんとお父さんはその間藤野家に行くんだってー」
「なんで?!」
「その間はお母さんたちの部屋が康貴くんの部屋ってことにするみたい」
「あー……」
そこまでする必要あるのかなって思うけど……まあうちの両親ならそっちのほうが楽しそうというだけで決めかねない。というかそうやって決めたんだろうなぁ。
「と、いうことで、朝から晩まで康貴にぃがいます! そこでお願いなんですが……」
「わかってるわ。ちゃんと料理も他の家事もしてあげるから」
「ありがとー! お姉ちゃんすき!」
調子よく抱きついてくるまなみを撫でながら、献立を考え始める。
康貴が好きなものは多分……揚げ物が多いけど、そればっかりだとなぁ……。
「ふふ、お姉ちゃん楽しそうな顔してる」
「そんな顔してないわよ」
「夜はね、自由時間だからまた3人で遊ぼうね!」
「ちゃんと宿題もすすめるのよ?」
「でも、あんまり早く終わらせちゃうと康貴にぃすぐ帰っちゃうよ……?」
確かに……。
「ま、そういうことでーす! よろしくね、お姉ちゃん」
「うん……」
まなみを見送ってまたベッドに置かれたぬいぐるみに顔を埋める。
「康貴が泊まってる間にデートに誘う……!」
そのためには……えっと……。
康貴はどこか行きたいところとか、あるかな?
握りしめていた携帯で行き先候補を探し始める。
「う……」
自然とデートスポットやカップルおすすめ、といった言葉を選ばないといけなくなる。
「これは……意外と恥ずかしい……かも」
顔が赤くなるのを感じながら色々な行き先候補を眺めて過ごした。
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