第11話 山口晴樹
まずい。
ちょっと熱っぽい気もする。
なによりポカリも飲む度吐いている。
さっきから嘔吐物が黄色いのはこれは何だ?
不安すぎる。
助けてと言いたいが言えない。
俺はもうずっとバーベキューレジャーシートに横になっているがぼちぼち背中も痛い。
『どうでしょう?そろそろ決断してもらって。素直に救急車呼びましょう?それか病院行きましょう?』
織絵はしつこい。
まあでも看護師のこいつがここまで言うのであればそれ程のことなのかもしれない。
飲み過ぎた時のように吐ききればスッキリすると思ったが甘かった。
俺だって早く楽になりたいさ。
しかし車をイジられたくないんだよ。
運転席に座られたくないんだよ。
中里も志村も俺より背が高い。
なら絶対シートを下げるだろう?
そうすると見えちゃうんだよ。
美希のパンティーが。
美希とはもう一年以上になる。
俺が玄関先でタバコを吸っていると何気なく話しかけてきては、近所のゴシップに始まり旦那の愚痴で終わる。
俺は直感で気付いた。
この女ヤラレたがっているなと。
旦那が低収入。家事を手伝わない。不満がある。
共働きである。
子供も手が掛からなくなってきた。
これだけの牌が揃ってリーチを掛けない手はない。
「このあとどうですか?」
酒を飲むジェスチャーを交えて誘ったら難なくツモった。
その日にご休憩だけで三発やった。
ほとんど美希の腰の動きに搾り出された様なものだった。
あれから週二回は会っている。
しかし何であんな所に、運転席のシートの下なんかに置いたのか自分でも分からない。
むしろシートを下げなくても下を向いただけでチラッと見えてしまう。
美希のお気に入りの気合いの入った紫透け透けパンティが。
この間、どうしても移動時間が惜しくて車でヤッた。ベルファイアの広さは伊達じゃない。
しかし帰りに美希が「パンツの中がグチュグチュして気持ち悪い」なんて言うからだ。
それを聞いた当時は色んな意味で興奮したが。
それならその日のウチにコンビニのゴミ箱に捨てるなり何なりすればよかった。
一時の迷いだった。
人間は本来賞状だとか勲章だとか自分の戦績を形にしたものを記念品として大事にする習性があるらしい。
自分はまだまだ男じゃい。
それを実証づける勲章。
愚かだった。
何よりこの状況で恨めしいのは、本来味方として使えるはずの美希が無免許と言うことだ。
まずい、あんなものが見られたら俺は笑いものだ。
美希にも「なんで大事にとっといてあるの?キモ!」なんて言われそうだ。
どうしよう。
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