第4話 中里織絵

本当につまらない。

今日何度隠れて溜息をついたか分からない。


『どうですか?織絵さんから見て。』

美希が山口の傍に屈みながら尋ねる。 

『うーん…ちょっと。いきなりキたならやっぱり食中毒かなあ。』

分かるわけないだろう見た目だけで。検査したわけじゃあるまいし。看護師を万能とでも思ってるのか?


『うぅぅぅ……』

山口は呻いている。早く医者なり何なり行けばいいのに。


男連中はともかく、この志村美希と言う女が苦手なのだ。


同じ時期に売られていた建売に住んでいるご近所と言うだけで何故こんな馴れ合いのような付き合いをしなければならないのだろう。

 私はそう思って止まないのだがこの女は心底楽しそうに次々にイベントと言うなの頭痛の種を持ち出してくる。

 

実に鬱陶しい。


私は子供も作りたくなかった。何故なら「ママ」と言う括りに入るとその分こう言った余計な付き合いに駆り出される率が高まるからだ。


だから子供は要らないといってくれる今の旦那と一緒になった。

なのにこれだ。

そもそもあの家を買うのは反対だった。


何故建売?

何故こんな狭い土地に?

と。

私は出来れば近所付き合いのないひっそりとした地域に、庭付きの注文住宅を建てたかった。


私と旦那の年収を足せば夢ではなかったのに。看護師の年収は女としてはそれほど悪くない。


なのに旦那ときたら。

『家が財産なんて考えは古い。賃貸と変わらないローンで住めればいいんだ。』

そう言われた時には絶望した。


理屈を捏ねるくせに仕事の出来ない男ほど鬱陶しいものはない。



対して美希はまだ恵まれてると思う。

だからこそ余計に腹が立つ。


それより何より腹が立つのは家の旦那、

あの馬鹿は私が山口なんかと浮気をしてると思っている様だ。

気持ちが悪い。




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