♮129:忘却ですけど(あるいは、#056被ってる分/進むんだからねっ(今★更
「レジェンド……そして【
童顔少年の、顔に似合わずの厳かな声色で放たれた、これでもかの設定盛りに対しても、やや真顔という半歩下がっただけのスタンスで受け流す態勢の僕ではあったが。定まって……定まってないよね? すごい小出しにしてくるけれど。
「……『獣の者』だとぅッ!? なら貴様は……貴様はいったいぜんたい、何の『字』を持つ者だと言うんだぁッ!!」
そして職人芸の趣きを有してきつつある翼のテンプレ誰何が、徐々に緊迫感を増してきたこの空間に響き渡る。ちなみに今この瞬間も、双方空中を疾駆したままの状態であり、残り8分ほどで決着がつかなければ、どちらも墜落の憂き目にあう。のだから、早め早めにお願いしますね。
「我が名は『
あどけない童顔にとんでもない修羅を宿し、言ってることの八厘もこちらに伝わってはこない音声を発しつつ、「結城」と名乗った少年は、相変わらず体の前に抱きかかえた金髪美女の肢体に指を這わせながら、こちらをひどく自信たっぷりにねめつけてくるのだけれど。わっかんねー、わっかんねー部分がどこかさえもわっかんねー。
「自らの能力に、疑義を持ったままこの戦いに臨んでいるみたいだね……『ダメの本質』。そんなところを考えているんじゃあ、ないのかい?」
要所要所にタメを作る絶妙な語り口でそう続ける結城少年は、例えるなら芸歴40年くらいのベテラン大御所俳優のような何とも言えない迫力を持っているのだが。
言われたことは、どんぴたなのであって。「本質」。先ほど屠ったコライにも葛藤を見透かされていた。押し黙る僕を蔑むような目で、結城少年は口を開く。
「『本質』なんてものはダメには無いよ。嘘いつわりが無いのであれば、それがすなわち己のDEPってことになる。どんなに常軌を逸してたって、ありえなさ過ぎて真顔になったって。自分の内から出たものは全て自分だよ。良くも悪くもね。ま、『言語の違い』を逆手に取って好き勝手やってる奴らもいるようだけど、それは僕ら『獣』がいずれ屠る」
つらつらと長台詞を役者顔負けの流暢さで紡ぎ出してくる少年だけれども。言いたいことは脊髄辺りで把握できた気がする。
迷うのはもうやめだ。全力のDEPを、全力の自分をただ、撃ち放つだけ……ッ!! 急速に肚が座ってきた僕は、結城少年とかっちりと視線を合わせると、自らの中に滾るDEPを練り編みあげていく。
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