独り語り

橙 suzukake

第1話 酒と肴と俺と君

 


 例えばさ、例えばだよ、今夜、来ている呑み屋に、俺は酒を呑むのを楽しみにして来てるわけ。で、肴っていうのはさ、酒を美味しくいただくために頼むわけよ。わかる?でもさ、君は違うでしょ?お酒は呑むけど、肴を美味しく食べるために酒をほんの少し呑んでいるわけよ。でしょ?それってさ、ちょっとしか違わないようで、だいぶ違っていると思うわけよ。


 ん?わかんない?


 だって、そうじゃん。それってさ、だいぶ違うことだと思うわけ。


 何が違うって、俺は君が好きなわけ。わかる?でもさ、君は俺を好きなんじゃなくて、俺にもれなくくっついてきている肴を好きなわけ。俺を呑むことで、俺に付随している肴を愉しんでいるわけよ。それってさあ、俺とすれば結構、心苦しいわけよ。言ってみればさ、俺じゃなくても、俺に似ているテイストの酒さえあれば肴を愉しめるってことでしょ?代用品が効くってことじゃん。それってさあ、哀しいよ。俺は、君という酒じゃないとだめなの。君という酒があれば、肴なんて塩だけだっていいわけ。


 ありがとう…って、お礼を言われてもなあ。逆に、俺が君にお礼を言うシチュエーションにしてくんないかなあ。


 難しくてわかんない、って、もう…まあ、いいや。惚れたもんの負けなんだわな、きっと。よし!俺は、今夜、とことん呑むよ。ううん!酒じゃなくって、君をとことん呑むからね!


 え?悪酔い? するよ~ 覚悟しておいて~




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