ユーカリ42枚目 パンダアタック
パンダの右の剛腕がデュラハンの頭を奴の右手から飛ばし、宙を舞う。
そこへパンダの左手がヒットし、デュラハンの首は反対側へ飛んで行く。
だがしかし、お次はパンダの右手がデュラハンの首を弾く。
そして左手が……。
五回ほどお手玉すると、デュラハンの硬い兜がひしゃげていく。
その間に俺もデュラハンの首から目だけを出した頭を引っ込め、中の弱点である赤い丸をブルーメタルの槍でひたすら突き刺す。
「パンダ―! ラストだああ。決めるぞ」
叫ぶと同時に、勢いをつけとどめの槍を赤い丸の中心に突き立てた。
『パンダは笹が食べたいようです』
こんな時に、何考えてんだと呆れる暇もなく、デュラハンが闇の煙となり溶けていく。
ぐ、ぐうおお。
急いで煙を払わねえと。
「むしゃー」
気合と共に槍を風車のように回転させ、闇の霧を払いのける。
これぞ、コアラ流大車輪(アンデッドの霧対策)。
しゅたっと地面に降り立ち、ブルーメタルの槍をアイテムボックスへ仕舞い込む。
反対側の手で既にユーカリの葉は出している。
もしゃ……。
決まったぜ。
『パンダは笹が食べたいようです』
「全く……もしゃ……」
パンダがうるさいので、笹を出してやるとその場でお座りしてもしゃもしゃし始めた。
「す、すごいです! コアラさん、パンダさんも!」
「連携プレーをすれば怖い物などないのだ」
「はい! 初めてなのによく連携できましたね!」
「できるかは分からなかったけどな」
「え……」
「まあ、失敗しても何とかなるさ。ははは」
「えええ……」
「大丈夫だ。問題ない」
「は、はい……」
パンダがある程度強いことはレベルからも分かっていたし、いつだったか忘れたが何かのアンデッド相手にペシンで首を折ったこともあったよな?
あいつはああ見えて、毎日笹を食べるために幾多のモンスターを仕留めてきた歴戦の強者なのだ。
何とかなるだろうとは思っていた。
アンデッドの首をへし折ったこともそうだし、蜘蛛をパンチ一発で潰したことからパワーファイターで間違いないと踏んでいたからな。
予想通りと言えば、予想通りなのだよ、ふふん。
俺がすごいわけじゃあないけどな!
「最後にいい運動をしたし、戻るか」
「一応、ドロップアイテムを拾いませんか?」
「ん? 何か落ちていたのか?」
アンデッドはユーカリを落とさないからまるで興味がなかった。
そういや、たまにアイテムをドロップするってコレットが言っていたな。
「はい。レアアイテムですよ……一応」
「そうか、街で売ることもできるし、拾っておくか」
改めて地面を見ると、確かに何か落ちている。
小手かな。右腕用だと思う。元は綺麗な漆黒だったんだろうけど、ところどころ錆が浮いている。
余り高価そうなアイテムじゃあないなあ。まあいい。足しにはなるだろ。
イチョウの巨木の下にある我が家へ戻ると、すぐにコレットが食事の準備に取り掛かる。
俺はパンダとスパーリングを試してみることにしたんだ。
パンダは笹を一枚あげたら、あっさりと協力してくれた。安い奴め。
パンダと対峙し、じゃれあっているだけで格闘スキルががっつんがっつん上がっていく。
こいつはいい。
ガソリン(笹)が切れたら、補充するとまた動いてくれるし。熟練度上げに最高だ。
◇◇◇
狩りと熟練度上げの日々を繰り返していると、あっという間に二週間が過ぎた。
ユーカリのストックは順調に増え、ついでに笹も大量のストックができたのだ。頑張って狩りをした甲斐があったってもんだぜ。
もちろん、レベルと熟練度も成長している。
『名前:
種族:コアラ
レベル:84
スキル:有
魔法:有』
続いてスキルだ。
『スキル一覧
ユーカリサーチ
ユーカリパワー
ユーカリ覚醒
ステルス 熟練度 100.00
探索 熟練度 100.0
解剖学 熟練度 100.0
動物学 熟練度 100.0
罠 熟練度 0
魔法 熟練度 84.6
治療 熟練度 1.2
道具作成 熟練度 42.2
忍び足 熟練度 100.0
槍 熟練度 100.0
錬金術 熟練度 58.4
ニンジュツ 熟練度 0
キャンプ 熟練度 90.6
マッピング 熟練度 3.2
テイム 熟練度 88.9
格闘 熟練度 79.6』
お次はコレットとパンダ。
『名前:コレット・マズリエ
職業:回復術師
レベル:69
ギフト:有
スキルスロット1:軽業師 熟練度89.9
スキルスロット2:弓 熟練度94.6』
『名前:パンダ
種族:パンダ
レベル:74
スキル:笹パワー
黄金の左
パンダパラダイス
状態:草薙壮士のペット』
塵も積もれば山となる。ユーカリの道も一歩から。
広大な森は山脈と草原に繋がる部分があるんだけど、山麓以外は粗方踏破した……と思う。
森のモンスターは四肢動物に見た目が近い魔獣やキノコや樹木といった植物系、厄介な空飛ぶ魔物などなど多岐に渡る。
今まで出会った中でコレットスカウターによると、一番レベルが高いのがフォレストドラゴンってのとジャイアントワームの二体。こいつらがレベル82だ。
強いモンスターほど個体数が少なく、リポップまでの日数も長いことから、滅多に高レベルモンスターに出会うことはない。
いるにはいるんだけどな……。
だけど、レベル80以上のモンスターとはなるべく戦いを避けたいところ。特に他のモンスターを積極的に襲わないモンスターなら尚更スルーしたい。
倒すのが大変だからだろって?
そんなくだらない理由なわけがないだろ。
「コ、コアラさん。マンティコアですうう」
「なんやてええ」
ステータスを見て悦に浸っていたら緊急事態発生だ。
気配を探ってみると……俺たちのいる樹上より十五メートルほど上空に浮かんでいることが分かる。
「よく気が付いたな。コレット」
「えへへ。パンダさんが指さしてたんです」
「パンダが……明日は空から笹がふるかもしれんぞ」
やるじゃねえかパンダ。
確かにパンダは枝と幹の間に脚を挟み、ぬぼおおっと上を向いている。
涎がダラダラ出てるけど、これって寝てるだけじゃないのか?
ま、まあいい。
結果はどうであれ、マンティコアに発見される前に気が付いた。
すぐに気がつかなかったのは、ぼーっとしていた俺の不覚だ。
「こうしちゃおれん、コレット」
「はい」
「逃げるぞ。ひゃっはー」
「え、いいんですか」
「当たり前だ―。お空は怖いぞおお」
「ほっとしました……コアラさんのことだから、『やれ、弓で落とせ』とか言うと思ってドキドキしてました」
「そんなわけないだろお。マンティコアはレベルが81だぞ」
「そ、そうですよね。81もあるんですもの。逃げるべしですよね」
「うん。その通りだ。レベル80を超えるとユーカリを落とさないからな。変な小瓶が出るし」
「あ、あはは……」
なんだ、その乾いた笑いは。
突っ込みは後だ。逃げるぜ。
パンダをツンツンして、「逃げるぞ」と合図をする。
『パンダは笹が食べたいようです』
よし、起きたな。
「笑うのは後だ。行くぞ、コレット」
「はいい」
あばよおお。とっつぁん。
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