ユーカリ35枚目 我が家
キャンプスキルを鍛えつつ、狩りを続けあっという間に一週間が過ぎてしまった。
相変わらず川のほとりで休息しているわけだが、今日は狩りを休みにして見に行こうと思っている拠点候補があるんだよ。
昨日発見した時は、ここなら使えるんじゃないかと思ってね。
アンデッドは相変わらず出現しているし、ベノムウルフのリポップタイミングは未だ調査中と余り事情は変わっていない。
この一週間は謎には触れず、ユーカリと笹のストック数を増やすこと、コレットとパンダとの連携強化、レベルアップに集中したからな。
その分、みんな、この一週間で成長したんだ(アンデッドの奴らは高いレベルだしな……)。
まず俺。
『名前:
種族:コアラ
レベル:72
スキル:有
魔法:有』
続いてスキルだ。
『スキル一覧
ユーカリサーチ
ユーカリパワー
ユーカリ覚醒
ステルス 熟練度 100.00
探索 熟練度 99.6
解剖学 熟練度 79.1
動物学 熟練度 94.1
罠 熟練度 0
魔法 熟練度 60.2
治療 熟練度 1.2
道具作成 熟練度 24.2
忍び足 熟練度 85.2
槍 熟練度 95.4
錬金術 熟練度 34.2
ニンジュツ 熟練度 0
キャンプ 熟練度 60.4
マッピング 熟練度 2.2
テイム 熟練度 50.9』
ユーカリ覚醒とかいう謎スキルを覚えたが、まだ一度も使っていない。
ユーカリパワーと同じ危険な香りがするんだよなあこれ……スキルを使用するとユーカリの葉が失われる気がして、さ。
コレットも順調に成長している。
『名前:コレット・マズリエ
職業:回復術師
レベル:54
ギフト:有
スキルスロット1:軽業師 熟練度70.5
スキルスロット2:弓 熟練度72.6』
特に弓を集中的に鍛えたからか、メキメキと実力を伸ばした。それが数値にも表れている。
あとは、パンダ。
パンダは、最近レベルが見ることができるようになった。
どうもテイム生物のステータスを閲覧するには、テイムの熟練度が50必要みたいでな。
『名前:パンダ
種族:パンダ
レベル:58
スキル:笹パワー
黄金の左
パンダパラダイス
状態:草薙壮士のペット』
一緒に狩りをしたからか、パンダもなかなかなレベルになっていた。
所有スキルが気になって仕方ないが……スキルを使うようパンダに頼んでも『パンダは笹が食べたいようです』以外のメッセージが出ねえ。
もう少しテイムの熟練度が上昇したら、スキルの使用を見ることができるんだろうか。
上の二つはともかく、最後のパンダパラダイスは嫌な予感がするが……。
「コアラさん、お待たせしました」
お、コレットの準備が整ったようだな。
彼女はこんな森の中で誰とも会う事がないというのに、毎朝ちゃんと顔を洗い髪の毛も整えている。
二日に一回は洗濯をするし、しっかりしているよなあ。
俺とパンダは丸裸だから何も必要ない。水浴びはするけどな。
「じゃあ、向かうか」
「はい! 楽しみです」
大木の幹をスルスルと登り、コレットとパンダと共に樹上を移動し始める。
◇◇◇
上流へ上流へと川沿いに進んで行くと、見えてきた。
トレントがいた所より更に上流だ。まだ森の中とは言え、少し傾斜が出て来たように思える。
川は高い所から低いところに流れるから、この先が山なのか小高い丘なのかは分からないけどここより高度があるところなことは確かだ。
目的地は、あの巨大なイチョウの木。
このイチョウの木は、異世界の成長速度だと分からないけど、地球にあるとしたら樹齢千年は軽く超えるだろう超巨木である。
イチョウの木の枝に飛び移り、スルスルと根元まで降りて行く。
根元には洞があって、昨日チラッと見た感じ中もそれなりに広いと思ったんだ。
「入ろう」
「はい!」
ドキドキしつつ、洞の中に入ると――。
素敵な空間が広がっていた。
天井こそコレットの身長でつっかえそうだけど、広さは充分。
三人で寝そべっても窮屈さを感じないほどの広さがある。
洞の入り口もパンダでむぎゅーっとしなくても通過できるほどの大きさだった。
狭い入口かもしれないけど、却ってこの方が俺にとっては好ましい。入口が狭い方が、下手なモンスターの侵入を塞ぐことができるからな。
隠すにも良い。
所々にある隙間からは、日が差し込んできそうで雰囲気が出るだろう。
「良いな。ここ」
「わたしも気に入りました!」
パンダは……さっそく寝そべっていやがる。
「うまく行けばいいんだけど……」
「わたしもコーデックスに聞いてみます」
せっかくいい場所を見つけても、いない間に他のモンスターの寝床にされたりしたらたまらないからな……。
キャンプスキルの力の見せ所だぞ。
「キャンプ」
失敗の脳内メッセージが流れないことから、キャンプスキルが発動したことは分かる。
だが、どの範囲に発動したのかとか、効果を発揮しているのか、なんてことが全くもって不明だ。
「コアラさん、キャンプスキルはここからここまでー、って念じるみたいですよ」
「ほ、ほほう。発動したら一種の聖域みたいになって誰からも察知できなくなるんだっけ」
「はい。その認識に近いです。別空間に移動するとかではありませんが、完全に認識を逸らすことができます」
以前コレットから説明を受けた繰り返しだが、キャンプスキルの認識疎外はステルスや忍び足と違って「完璧」なんだ。
俺とパーティメンバー以外の者からは完全に認識されなくなる。
だけど、存在することには変わりないので、イチョウの木ごと破壊されたりしたらアウトなんだけどな……。
「スキルの発動範囲は分かるかな?」
「熟練度20ごとに1メートル……みたいです。思ったより狭いですね」
「いや、問題ないだろ」
洞の中は外からじゃあ見えない。
入口を除けば、な。
「よっこいせっと」
洞の外に出て、ぽっかりと空いた入口を凝視する。
ぬううおおお。
ユーカリ、ユーカリ……。
ささやき、いのり、えいしょう、ねんじろ。
「キャンプ」
よし、スキルは発動したぞ。
これでいいのかなあ。
「どうですか?」
「スキルは発動したが、正直分からん」
「そ、そうですか」
「うん。だって、俺はもちろん、コレットもパンダも俺の認識疎外の対象外だろ?」
「あ、そうでした」
この後、猪にちょっかいを出してイチョウの木まで引っ張って来て実験を行った。
木の洞の中に入ったところ、猪は完全に俺たちの姿を見失い諦めてすごすごと戻っていく。
あ、猪が戻る途中で後ろからコレットの弓で仕留め、お肉となったことは言うまでもない。
「美味しいです」
洞から出たところで、火を焚き、コレットが肉汁溢れる猪肉を美味しそうにほうばる。
俺?
俺はユーカリの葉とユーカリ茶に決まっているじゃないか。
これが至高であることは誰の目にも明らかだ。
「一度、街に行かないか?」
「え! いいんですか?」
「うん、コレットもたまには街に戻りたいだろうし。俺も俺でやりたいことがある」
「装備の手入れとかですか?」
「それもあるけど、せっかく拠点ができたんだ。家具やら調理器具なんてものも揃えたくないか?」
「そうですね! 素敵です!」
こうして、俺たちは再び街へ繰り出すことになったのだった。
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