第2話

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 二人はどうにか、時間前に円山公園に辿り着いた。快晴の芝生広場の中心へとアキナは移動し、老若男女が取り囲む。

 蓮は、アキナから少し遠目の位置で立っていた。群衆の向こうには桜の木が見られるが、時期でないため花はなく、葉を茂らせているのみだった。

 神人と一般市民との友好を計るための、アキナの演舞披露の集いだった。人の輪の中心で、アキナは緊張を感じさせない堂々たる振る舞いで、伸びやかに動き回っている。

(俺も武を志す者の端くれだ。何か取り入れられるかと思ったけど、ありゃあ、つくづく人間の動きじゃあないって。「神人」って呼び名は、見事なまでに本質を捉えてるよな)

 大きな側転を終えたアキナは、両の拳を胸の前に構え、左半身を前にした姿勢を取った。芝生広場に、一瞬の静寂が訪れる。

 アキナは右前になり、頭を軽く斜め後ろに引いた。同時に曲げた右脚を胸の位置まで持ってくる。

 次の瞬間、ブォン! アキナが斜め上方を蹴り込むと、重々しい音がした。遥か高くを飛んでいた二羽の雀が、風圧で飛行の制御を失った。

(テコンドーのヨプチャチルギ(横蹴り)、か。けどあんな上を飛んでる鳥が、盛大にふらつくかよ。まともに食らったらどうなるんだ?)

 蓮が舌を巻く一方で、アキナの演舞は続いた。ベースは種々の蹴り系格闘技だが、終始、動作は常識外れだった。

 アキナは疲れを一切見せず、演舞を進めた。アウー・シバータ(前方宙返り踵落とし、カポエィラの技)に、またしても小さく歓声が上がる。

 すぐにすうっと立ち上がり、アキナは直立姿勢に戻った。

「ありがとうございました。そしてごめんね、雀さん」と、芯の通った高い声とともに深々と礼をした。

 蓮は物思いから復帰して、観衆とともに拍手を始めた。視線の先では、アキナが照れたような面映おもはゆい表情で何度も小さくお辞儀をしていた。

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