のこされたぼろ雑巾
君のいた場所はいま、枯れたゴーヤの蔓がさみしげに揺れています。
君は、幸せでしたか?
私は、君に出会えて幸せでした。
君の死は強烈すぎて、
夢に出てきてくれても君はいつも死んでいる。
夢でくらい生きててくれてもいいじゃないか。
もしもう一度だけ会えるなら、凍えても一晩一緒にいよう。
君がひなたぼっこしていた場所で。
幽霊でも良いから会いに来てと思ってるのに。
私を連れていこうと思ったりしなかったの?
私は、拒まなかったのに。
優しい君のこと、家族から私を取り上げるようなことをしたくなかったんだね。
生きろ、というのだね。
こんな、ぼろ雑巾に。
年老いた私、年老いた君、年老いた猫、
そうやって足並みそろえて、あたたかな日差し降り注ぐ中、
うたた寝でもするように、眠るように、
一緒に消えることができたら、どんなに幸せだっただろう。
私が年老いる頃にはきっと猫もいないし、
たぶん地球は壊れてて、あたたかな日差しなど存在しないかもしれない。
じりじりと焼かれるようにして死ぬのかもしれない。
ほら、空が明るくなってきたよ。
毎日そうだ。闇は明け、陽は沈みまた闇が戻る、繰り返し。
遠い遠い世界への入り口は、黎明と黄昏のどこかにあるような気がする。
でも、見つけられないんだ、いつまでたっても。
その扉を開いたら、君がいる世界にたどり着けるんじゃないかという気がするんだ。
いつ見つかるかはわからないけれど、それでもいつか必ず行き着くそこ。
そこで、待っていてくれますか。
あの頃のように、尻尾を揺らして、待っていてくれますか。
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