雨の中で薄れゆく

ああ、手が、届きそうで届かない。

少し前から、ずうっとそうだ。


どろり。

どろり。

鉄臭いなにかに足をとられ、

意識を濁され、

ああ、倒れる。


痛い。

どこが。

目が。

腕が。

首が。

肩が。


ダメなのかな、もう、ダメなのかな。


かすかな雨の音。

よごされた水が降る。

冷える、

冷える、

街と、

肌。


誰かの体温があんなに温かくてほっとするもので、

そして、雨があんなに冷たくて惨めになるものだったなんて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る