第89話 ノーシア大使の歓迎の宴
俺は昼間はマトモな大使として、大使館の立ち上げの仕事を着々とこなしていた。
サウス帝国側がシン・ラン皇女を発見、保護した礼も兼ねて、大使着任の宴を開いてくれるという。
意外と歓迎されているのか?女帝がジョイを食いたいのか?
まぁ、どちらでもいい。
夕陽が馬車の窓から射し込んで来て、ジョイが身につけている白い礼装を赤く染めている。
第五魔法騎士軍の礼装は基本的に黒で統一されている。
しかし今回大使と公使として派遣されてきた俺たちは白の礼装もノーシア国王より許されていた。
だいたい黒じゃ暑苦しいしな。
俺とジョイは馬車で宮殿の門をくぐった。
「イチ大佐ぁ、歓迎の宴って何してくれるんですかね?」
ジョイは女帝へのプレゼントを膝に抱えている。
「俺は薄着の女が踊ることを期待したい」
「いーですねぇ!!お持ち帰りもできたら最高!」
「ジョイ、オマエが女帝にお持ち帰りされる可能性もある」
「えっ!?」
「断るなよ」
「えーーーーーーー!?」
「死ぬ気で任務をこなせ!」
「マジっすか!?僕、病欠します」
「アホ!二階級特進させてやるからな?な?頑張れよー」
***
豪華な庭園を望む迎賓館らしき建物。
北に位置するノーシア王国では見られない南方特有の派手な花々が咲き乱れている。
日が沈み、シャンデリアの明かりが煌めきを増したころ宴は始まった。
ハーレム選抜男子メンバーを引き連れた女帝が登場し鎮座する。
サウスは床に座ってくつろぐのが基本だが、皇帝が座る床は貴族どもより高くなっていた。
デカくて豪華なクッションを背中にあてがい、美形従者たちを周りに座らせている。
俺が挨拶を述べている間も、
逆ハーレムメンバーよ。俺は男として同情する。
その腕重いだろうな。
「素晴らしい祝宴を御開催いただき、無上の喜びにございます。貴国の音楽も料理も誠に見事で、見るもの全てに感動いたしました」
「今宵は楽しまれよ、大使殿。決まりごとなど、気にする必要はない」
「ありがたき幸せにございます」
肥満女帝は気持ち悪いとしか言いようのない笑みを浮かべた。
ノーシアの管弦楽とは違った響きのサウス風の音楽。
鉄琴の音が異国を感じさせる。
「サウスは床に座るんですねー。この背中のクッションいい感じです。僕、サウスの文化好きだなぁ」
ジョイが言うことに俺も異論はない。
女帝の趣味は最低だが、サウスの文化は俺も気に入っている。
男はあぐらをかいて座る。
絨毯は複雑な紋様が織り込まれ、座り心地は抜群だ。
絨毯の上には金銀の食器が所せましとおかれ、その上にはさまざまな料理が盛り付けられている。子羊の丸焼き、魚の揚げ物、芸術的にカットされた野菜や果物、色とりどりの菓子などその内容は豪華で多岐にわたる。
鮮やかな彩色の陶器の壺が何種類も置かれ甘い酒の香りが漂う。
一目でサウスの文化レベルが高いことがよく分かる。
美人で胸のデカイ女達があれこれと料理を取り分けては持ってくる。
上衣は胸部だけを覆うようにグルグルと絹織物を巻きつけてある。腹は丸見えだ。スケスケの薄いレースをはおってはいるが、スタイルに自信がないとサウスの女官は務まらないだろう。
下は巻きスカートだ。
超がつくほど脱がせやすいぞ!
ハーレム方式が基本なのか?
良い文化だ。ノーシアも真似してほしい。
「シン・ラン・サウザン殿下の御成りにございます」
従者が仰々しく述べる声が響いた。
横目で確認する。
生きている。間違いなくルシャだ。
ルシャは青い衣装を着ていた。形は皇帝のものと似ている。頭に帽子みたいなものを被っていて髪が見えない。
袖と裾の長い豪華な刺繍が入った重そうな服だ。俺は不服だ。
なんだあれは!?セクシーの『セ』の字もないじゃないか!
女官たちを見習え!
ルシャは皇帝より、低い床に座った。なぜか貴族の女たちは立て
アイツに色気がないのはこういう貴族文化のせいだな。
なるほどな。
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