第64話 ゲートキーパーの伝令君
―――暗き怒りここに放て。爆裂!!
バァァーーン!!
ウエスタ連邦の兵士がバラバラに吹き飛んだ。
「進めぇーー!」
テンション高めの
余裕で勝てる。だかおかしい。
最前線のわりには敵兵が少なすぎる。
ジェラーニの偵察兵の報告がクソ情報の可能性が高い。
やっぱバカ殿下は始末しないとな。
ティアは渋っていたが、戦場でこそっと殺そっかな?
***
「イチ大佐、妙だと思いませんか?」
もっと前に出ていたはずのジョイが、わざわざ俺の所に戻って来てまで進言するのは珍しいことだ。
「どうしたジョイ?」
「やたら出たり引っ込んだり、無駄な動きが多いような気がして。」
ジョイの顔が曇る。
コイツも戦場に慣れてきたもんだ。
つい数年前まで、一目で分かるくらいガチガチだったのに。
俺と同じ違和感を感じられるくらいには成長したのか。
ヒュン!バシッ!
飛んできた矢を刀で払う。
思考を戻した。
冬が本格的になる前にウエスタ連邦の部族が暴れることはよくある。
近年、凶作続きのウエスタは冬を越すための食糧も金もないからだ。
「一族を生かす」
その明確な目的を持つ奴らは必死の戦闘を仕掛けてくるのが常だ。
だが今回はその必死さがない。
「確かに、どこか本気じゃない。こいつらおとりか?」
ジェラーニの本隊を叩くつもりだろうか?
そんな動きはしていないような気もする。
ピシッと何かが割れるような音がした。
「ん?なんだ?」
「
刀を構える。
せっかく急襲に備えたのに、出現した小さな移動隙から出ようとしているのは何とも頼りなさげな少年だった。
「あれっ?挟まった!うーん!!出れないぃーー。」
「情けない急襲だな、オイ。」
刀でひと突きにしてやるか。
「うわぁぁぁぁぁぁぁーー!!バーレント大佐ぁ!お待ちくださいっ!伝令ですぅ!」と半泣きで言う。
「誰だオマエ?」
「あれ?その声は、ラキじゃないか!!二軍にいる後輩です。」
「うわぁぁぁん!!!ジョイセント先輩ぃー!!」
半泣きどころか、大泣きだ。
「なんだ味方か。ジェラーニの陣が襲われたのか?」
「ち、違います!いえそうなんですけど。えっと、ジェラーニ殿下の手が4本になってぇ、ストラウト総司令官とぉ、交戦中なんですぅーー!大佐に知らせに行けってぇーー!ルシャさんがぁぁーーー!!」
「ルシャぁ!?なんでオマエがその名前を知ってるんだ!?」
突然出てきたルシャという名前に俺はなぜか焦った。
左手が勝手に少年兵の胸ぐらをつかみ上げていた。
「ヒィィーー!大佐!おやめ下さいっ!!
早く、王都にぃ!西方司令部にぃ!帰ってきてくださいーー!!大変なんですぅう!!」
「このチビッコ、何言ってるか分からんぞ!?」
「落ち着けラキ!正確に報告するんだ!」
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