第42話 御前試合

「ルシャちゃん!今日はみんなで出張だよ。」

ボンバル院長が楽しそうに何やら準備をしだした。


「御前試合があるんじゃ。」

「御前試合?」

「毎年行われる人気の行事じゃよ。

各軍の代表騎士が国王陛下の前で闘うんじゃ。


ワシらは医療班として待機する。

まぁ、大きな怪我をする奴は少ないから。

試合見物しながら、昼間から酒を飲んどるだけの楽しい仕事じゃ。


医療班は特等席でみれるぞ!

騎士達も気合い入っとる。

各軍の名誉がかかっとるし、名を売るチャンスだからな!


家柄が低くても、のし上がっていくヤツもおる。

マインティアもそうじゃ。」


「あのお方も?」

「アヤツも一応は王族のはしくれじゃが身分は低い。でも今では総司令官じゃ。」

「とてもお若い総司令官ですね。」

「まだ30じゃからな。」


え?20代だと思ってた。

どうやってあの美貌を保っているのか聞いてみたい。

すごい秘薬に違いないわ。



***



医療班のテントはいざという時にすぐ駆けつけられるよう、試合場のすぐそばに設置されていた。

確かに特等席。



「おいジジィ!酒あんだろ?」と突然イチが入ってきた。


げー。会いたくない人が。


「オマエ本当にあからさまに嫌な顔するよな。ガキ!」

不機嫌そうな顔で、院長のバスケットをゴソゴソあさり始めた。


「ここは怪我人専用じゃ!オマエは元気じゃろ!席に戻れ!」


「俺は貧血で倒れたんだ。」と言いながら、ワインの栓を歯で開ける。

「第五はテントないからさぁ、まぶしくて嫌なんだよ。」


「テントくらい買え!」


「予算がない。」といいながら、ラッパ飲みするイチ。


「まぶしいから嫌なの?」

「俺は明るい所が嫌いだ。」

「どうして?」

「見えにくい。」

「また見えにくいって。本当に?」

「俺は夜の方が目が効くんだ。昼間は光がまぶしすぎてよく見えない。」


だから半分まぶた閉じて、目つき悪くみえるんだ。

なるほど。

それにしても夜の方が見えるって、夜行性動物なの?この人。


「イチさんは出場しないの?」

「大将は見てるもんだ。」


「第五はどなたが出場するんですか?」

「ウィンクルとか。」


「ウィンクルさん!?」


ちょうど試合場には出場騎士が並んでいる。

居並ぶ騎士たちは、各軍の代表だけあってかなりの体格だ。

ウィンクルさんの小柄さが目立つ。


「大丈夫なんですか!?」


「見てれば分かる。

魔力のないもの同士、魔力のあるもの同士、適当に試合する。

本気じゃない、ただの祭りだ。


午前中は下っ端ばかりだ。俺は寝てる。

ジジィ、昼になったら起こせよ!」

そういうと顔に新聞を被せ、本当に寝てしまった。


「院長、イチさんは目が悪いのですか?」

「あぁ…元々の、体質じゃ。」

「でも普通に歩いてますし、つまずいたりしませんよ。」

を飛ばして周りのものを察知しとるらしい。」


闇気やみけで人を感知したり、を飛ばしたり、イチってやっぱり普通じゃない。

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