精神科病棟日記
ルナ
第1章 急性期治療病棟(閉鎖病棟)
第1話 きっかけはボールペン
ここは精神科病棟、私は患者。DVで心が折れ「死にたい」と口走ったので連れてこられた。
(私は腸閉塞でもうすぐ死ぬ。子どもたちは児童相談所が面倒みてくれるから大丈夫)
いつも心の中で想像していたのは、これから行く天国
——辺り一面見渡す限り、お花畑が広がっている。そこには子どもたちと、いつまでも幸せに暮らせるお家がある。
川が流れていて空も自由に飛べる。おばぁちゃんたちや天使にも会える——
(早く死んでそこに行きたい)
そんな私に転機が訪れた。院内散歩の許可が下りたので、私は売店でボールペンを買った。
児童相談所に預けている子どもたちに、手紙を書くためだ。子ども宛なので絵も描いた。
もともと絵はうまくなかったのだが、描き続けていくとみるみる上達していった。
自分たち母子になぞらえた猫の絵を描き上げた。真ん中に母猫、右と左に子猫たち--。
(こんなにかわいい猫の絵が描けるんだったら、まだ死ねないね)
子どもたちへの手紙も「3人で住めるお家は天にある……」から「いっしょに暮らそう。……地でも……」に変わっていた。
3人で住める家はこの地上にはないと思っていたのが、探せばあるのではないかと思えるようになっていた。
頭の中で思い描くのとペンで表現するのとでは、こんなにも違うのかと自分で驚いた。
私の中にある生きる力を、回復させるきっかけとなったのは、1本のボールペン……。
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