(3)

 でも、今のミュゼットは、自ら意識してお色気を出しているわけではない。

 ただ純粋にお風呂に入っていただけなのだ。

 なので、ミュゼットは僕の顔を見て一瞬目を丸くすると――

 

「キャ――――――――!!」


 ある意味お約束な、耳の奥にキンキン響く年頃の女の子な悲鳴を上げたのだった。


「う、うわ。ごめん! ちょっと水が飲みたくて――」


 自分に非があるのは間違いないので、僕は慌てて謝り弁明した。

 しかしミュゼットは許してくれない。


「ユウ兄ちゃんのエッチ!! 変態!! 裸のボクを襲おうっていうの?


「べ、別にそういつもりでは……いきなりカーテンを開けたのは悪かったけど――」


「だまれぇ――――!!」 


 ミュゼットは僕のセリフにおっかぶせるように叫んだ。

 そして、腕を振り上げ手に持っていた風呂桶を思い切り投げつけてきたのだ。


「うわっ」


 僕は慌てて身をかがめた。

 が――見事にスマッシュヒット。 


 手桶は僕の頭頂部を直撃し「ゴンッ」と意外に大きな音がした。


 同時にぐらりと体が揺れ、“あれれ”と思った時には、僕はその場に転倒していた。

 体調が良ければ当たってもどうってことない衝撃だっただろうが、寝起きの自分にはキツイ一発だったのだ。 


 これもやっぱりお約束的展開――

 かもしれないが、一つだけでそうでもない事があった。


 転んだ僕の目線の先にあったのは、まさにちょうど、ミュゼットの丸出しの下半身。

 というか股間の特定の部分。

 男の本能として、僕は目を見開きそこをマジマジ凝視してしまった。


 ――あああああああああ!!!


 そして僕は異世界に来て最大級の――

 ベタベタ親しげなリナとリューゴの姿を見た時と同じくらいショックを受けた。


 ついてる!! 

 いや、ぶらさがっている!!

 僕と同じモノがミュゼットにも!!


 なんてこった。

 絵に描いたような美しいボクっ娘、ミュゼットは正真正銘の男だったのだ。

 いや――正確に表現すれば男の娘、か。


 それにしてもこんな綺麗な男の娘、現実世界のどこを探しても絶対に存在しないだろう。

 さすがはファンタジーな異世界と言うべきか。

 

 すべてが夢のようで素晴らしい……のかな?

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