(3)

「ヤダぁごめんなさい。アタシったらつい見とれちゃって……悪いクセね。でも男×男の立ち姿ってなんでこんなに絵になるんでしょう!」


 男爵が口に手を当ててオホホと笑い、軽く咳払いをした後、あらためて周囲を見回して言った。


「じゃあみなさん、準備はいいわね?」


 やや緊張した面持ちのリナと、普段通り無表情のマティアスがうなずく。

 少し離れた場所で待機している王の騎士団キングスナイツからも、特に異論は出ない。


 ところがリューゴだけが一人で思案顔をしている。

 しばし考え、首をひねり、そらから男爵に声をかけた。


「男爵、少々お待ちください。一つ提案があるのですが」


「あらなあに、リューゴ君?」


「さっきも申し上げたとおり、作戦自体は問題ないと思います。ですが後に残るのがあなた方四人だけという点に、私としてはどうしても不安を感じてしまうのです」


「んーそうかしら? アタシは大丈夫だと思うけど」


「しかし万が一ということもあります。負傷者もかなりの数に上るでしょうし、兵士たちをうまくデュロワ城まで誘導するのは大変な作業ですよ。ですから是非、我々からも人員を割かせてください」


「それは助かるけど、貴重な人材を借りちゃって本当にいいのかしら?」


「もちろんです。この際、王の騎士団キングスナイツの中でも特に優秀な者を選んでおきましょう。――おい、クロード! ミュゼット! ちょっと出て来てくれ」


 リューゴが三十余名の騎士団員に向かって呼びかける。 

 するとすぐに、二人の竜騎士が馬を降り僕たちに方へ歩いてきた。


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