(13)
その時僕は、昨日の夜、寝ている間にキスしてきた相手のことをまた思い出してしまった。
あの生々しくも、甘く温かい感触はまだ唇の上に残っている。
まさか、あれはやっぱりアリスだったのか!?
だが――
「いやいや、それはあり得ませんよ」
僕は首を振って否定した。
「どーしてよ?」
「だっていくらなんでも身分が違い過ぎます。僕のようなただの一般人、アリス様が好きになるわけないじゃないですか」
「だから人を好きになるのにそんなこと関係ないのよ! 身分も性別も年齢もどんなタブーでも、愛する二人の前ではなんの障害にもならないというのがアタシの長年の持論なの。それに美しき王女さまと若い兵士の道ならぬ恋――素敵じゃない」
「……男爵様ってかなりのロマンティストなんですね」
「ええそうよ! アタシはロマンティスト、悪い?」
そう言って男爵は手をひらひらさせながら踊った。
「――さてと、ユウちゃんも多少は元気を取り戻せたみたいだし、そろそろみんなを助けに行きましょうかね」
そうだった! バカか自分は!
恋愛バナシにかまけて、いったい何をしていたのだ。
今、この瞬間もエリックたちは生死をかけて戦い続けているというのに――
我に返った僕に、男爵は言った。
「大丈夫。これ以上誰一人死なせずに、みんなをデュロワ城まで連れて帰る方法はもう考えてあるから、ユウちゃんも協力してね」
「ええ、もちろんです。でもどうやって?」
「簡単簡単。
男爵は自信ありげにそう言うと、スキップをしてマティスの方へ向かって行った。
「マティア~ス♡ いい作戦思い付いちゃった」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
しかし、数千の敵に囲まれた数百の仲間を無傷で助け出す――
そんな奇跡を起こすような芸当、ここにいるわずかな味方の力だけで、果たして可能なのだろうか?
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