(11)

 でも――正直に言えば、そこが一番気になる点ではあったのだ。

 なのでゲスの勘繰りとは思いつつ、僕は男爵につい念を押してしまった。


「あ、あの……そ、それは、本当に本当なんですか?」


「だからソッチ方面のアタシのカンは絶対だって! 間違いないわよ!」


 二人はまだ最後の一線は越えていない……。

 ということは、まだ僕にはチャンスはある――のかもしれない。


 多少の安心を得た僕は、さらに男爵に尋ねた。 


「……そ、それは分かりました。では、あの竜騎士の人たちはそもそも何者なんですか? ちょっと普通じゃない感じを受けますが、マティアスは“王の騎士団キングスナイツ”とか言ってましたよね?」


王の騎士団キングスナイツ、ね――」

 男爵は急に神妙な顔つきになった。

「いいわ、教えてあげる。彼らはロードラント王国が持つ二十個の軍団どこにも属さない、秘密のヴェールに包まれた史上最強の騎士たちよ。王室直属の騎士団だから、一般の兵士であるユウちゃんが知らないのも無理はないわ」


「史上最強、ですか……」


「ええ、そう。彼らは王国全土から身分に関係なく選び抜かれた男子のみで構成される精鋭中の精鋭。わずか数十人の部隊だけど、全員そろって戦いの天才って言ってもいいくらいよ」


「へえー、秘密の騎士団ということなのに、男爵はずいぶんお詳しいんですね」


「フフフ、実を言うとね!」

 と、男爵は僕にウィンクをした。

「その中の一人とむかーしむかし、ちょっとだけ付き合ったことがあるのよ。あ、マティアスにはナイショにしててね♡」


 ……当然、その浮気の相手は男だろうな。


 グリモ男爵は結構モテるみたいだ。

 ただし同性限定で。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る