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 が、しかし――


「もちろん、すべて覚悟の上です。なにしろこの髪の色はすぐに元に戻りませんので」

 リナは美しい金色に染まった髪をさわりながら言った。

「薬を調合した宮廷魔術師の話では、効果は十日十夜とうかとうや続くそうですから、どうしようもないのです」


「どうしようもないなら、なおさらお城に引き返してください!」

 僕は強い口調で言った。

「一緒になんてとても行けません!」


「申し訳ありませんが、お断りします。ユウトさん、これまでにお互い何度も危険な目に合ってきたのに、いったい今さら何を心配するんです? それにユウトさんも一人より二人の方が心強いでしょう」

 

 そういえばハイオークと戦った時も、リナは僕を馬に乗せて走ると言って一歩も引かなかったな……。


 うーん、困った。

 どう説得すれば、素直に帰ってくれる?


 と、困る僕に、リナが不思議そうな顔をして質問した。


「――ところでユウトさん、さっきから気になっていたのですが、その手の中で光っているものは何なのでしょうか? その四角くてうすべったい板のことです」


 ……しまった。

 リナの突然の出現に気を取られ、スマートホンをしまうのを忘れていた。

 でも、今さら隠すわけにもいかない。

 

「こ、これはその――そう、魔導器という魔法の力が込められた、いわばマジックアイテムです」


 僕は適当なことを言ってはぐらかす。

 が、リナは興味しんしんだ。 


「へえー、いったいどんなことに使うんですか?」


 仕方ない。

 ならばこの際、スマホの存在がばれたことを逆手に取って、一緒に行くのを諦めてもらおう。


「まあ、いろいろな用途に使えるんですが――例えば」


 僕はそう言って、リナに向かって魔法を唱えた。


『スキャン!』


 すぐさま、お馴染みのステータスがスマホの画面に表示された。


 ネーム:リナ=クラウス

 クラス:ノーブル

 H P:490/515

 M P:0/0

  力 :455

 知 力:2211

 速 さ:752

 守 備:222

  運 :750

 黒魔法:0

 白魔法:0  

 スキル:馬術++ 弓+

 状 態:正常

 弱 点:ネズミ


 決して低いとはえないステータスだが、それでもアリスの各能力値よりはかなり下だ。


「リナ様、ちょっとこれを見ていただけますか?」

 と、僕はリナに声をかけた。


「え、なんです?」

 リナは僕が差し出したスマホの画面を覗き込む。

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