(6)

 リナはさらに詳しくいきさつを説明してくれた。


「ことが発覚すると、ルドルフ王もさすがにグリモ男爵をかばい切れなくなりました。そして男爵は逮捕され王国裁判にかけられたのです。当時の見せしめ的な大騒ぎは私もよく覚えていますよ。男爵には必ず死罪が言い渡されるであろう、と」


「なのに今、この城の城主におさまっているということは……」


「ユウトさんの察っする通りです。グリモ男爵はそれまでの功績を認められ死刑は免れました。ただし爵位を取り上げられ、二度と王都の土を踏めないようこの辺境のデュロワ城に追放されたというわけです」


「だけど……」

 僕は頭を抱えるマティアスを横目で見ながら、ヒソヒソ声で言った。

「グリモ男爵と対面するだけで、なぜマティアス様はここまで落ち込んでいるのでしょうか? 今のリナ様のお話だけなら、特に理由が見当たらないのですが」


「そうですよね……」

 と、リナも首をかしげる。

「お二人の間になにか因縁でもあるのかもしれません。――あ!?」


 リナがそこまで話したところで、突如デュロワ城の城門部分が、スポットライトが当たるかの如くパッと明るく照らし出された。

 続いて跳ね橋が「ギギギギギ……」と重々しい音を立てながら、ゆっくりとこちらに向かって下がり始めた。


 もしや衛兵が考え直し、僕たちを中に入れてくれる気になったのか――!?

 ……と、思ったのだが、それは勘違いだった。


 跳ね橋はだいたい四分の三ほど下りたところで、ピタリと止まってしまった。 

 これではまだ中には入れない。無理に進めば馬ごと堀の中にドボンだ。


 どうしてそんな中途半端なことをするのか不思議に思っていると、城内から戻ってきたさっきの衛兵が城壁の上から叫んだ。  


「グリモ男爵閣下のおーなーりーー」

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