(9)
すべての魔力を吸い取られたヒルダは立ったままの状態で白目を剥き、口からはよだれを垂らし、全身を激しく
まるで命にかかわるような、致命的な発作でも起こしたかのようだ。
それだけ僕の『
ヒルダは有り余る魔力をいっぺんに失い、ある種のショック状態に陥ったのだ。
「ちょっとキミ、ヒルダにいったい何をしたの!?」
今にも卒倒しそうなヒルダを見て、シャノンは気色ばんで言った。
「安心してください」
と、僕はシャノンをなだめた。
「その人の魔力を僕がすべて吸い取っただけです。命に別状はありません」
「……でも、てっきりヒルダにはキミの魔法は効果がないと思ったけど」
「確かに『シール』の魔法が効かなかったので僕もそう錯覚していました。でも、シャノンさんと剣を交えるうちに少し発想を転換し、また違う系統の魔法を唱えることを思い付いたのです」
「そうなんだ。私は魔法のことはあまりよく知らないから……。それにしても、キミがこんなにすごい子だとは思わなかった」
「……いえ別にすごくはないです」
なにしろここまでたどり着くのに多くの犠牲者を出してしまったのだから。
死んでいった竜騎士たちのことを思い、気分が暗くなりかかったところで――
誰かが叫んだ。
「おい見ろ『アストラル』が消えていくぞ!」
声につられ上を向くと、ヒルダからの魔力の供給が断たれた『アストラル』の黒い球体が、巨大な風船がしぼむようにしゅるしゅると縮んでいくのが見えた。
その後数秒で『アストラル』は跡形もなく消滅してしまった。
これで一安心。
後はヒルダをどうするか、だが――
僕は地面にヘナヘナ座り込んだヒルダに目を向けた。
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