(13)

 シャノンは冷たく光る黒い瞳で、僕を見下ろして言った。


「それにしても分からない……。ヒルダの魔法にビクともしないなんて、あなたいったい何者?」


 ローブの魔女はヒルダという名前なのか。

 今さらそれが分かってもどうしようもないが――


「答えなさい!」


 シャノンは刀を額により近づけた。

 もうほんの5ミリの間もない。

 

「単なる王女の護衛だ!」

 僕はやけくそになって大声で返事をした。


「嘘!」

 シャノンは首を振る。

「いくら魔法を使えるからと言って、あなたみたいなひよっ子が王女の護衛につくとは思えない。マントの下は普通の兵士の格好だし、不自然すぎる!」


 す、鋭い……。

 完全に見抜かれている。

 このままだと捕らえられたアリスが、実は影武者だということも勘付かれてしまうかもしれない。


「シャノン、そんなことはどうでもよい!」

 そこへヒルダが怒鳴った。

「さっさとその男を殺せ!」


「まったくうるさいわね……」

 シャノンはイラっとした様子でヒルダを無視し、僕に訊いた。

「ところでキミ、いったいいくつ?」


「じゅ、16……」


「ふーん。それは嘘ではなさそうね」


 シャノンはそう言うと、刀を下ろしそのまま鞘に納めてしまった。

 強烈な殺気もなぜか一瞬で消えた。


「シャノン、どういうつもりだ! なぜらない!」

 様子を見ていたヒルダが、ヒステリックにわめき散らす。

「オマエにいったいどれだけの金を払ったと思っている!」


「だから、なに?」

 シャノンは涼しい顔をして答えた。

「契約する時言っておいたはずよ。私は子供は決して殺さないって」


 シャノンはヒルダに金で雇われているのか。

 傭兵か、用心棒か――

 たしかにこの凄腕なら、かなりのお金を取れるだろう。


 でも子供って……。

 やっぱり僕のこと、なのか?  

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