第十二章 秘密
(1)
まともに見れば目がつぶれてしまうぐらいの強烈な輝きも、当然、魔法を唱えた本人には悪い影響を及ぼさない。
それゆえ僕は、一変した戦場の様子を一人で悠々見渡すことができた。
まず魔法が発動した瞬間、二千のイーザ騎兵はあまりのまぶしさに目をくらませ、その場に釘で打ち付けられたように固まってしまった。
続いて、光に驚いた馬たちが激しく暴れ出し、それを御することのできなかったイーザ騎兵が多数落馬した。
その結果、乗り手を失った数十頭の馬はますます狂乱し、他の騎兵をなぎ倒しながらイーザ陣営の中を暴走するという大惨事を引き起こした。
かたや『ルミナス』の効果が続いていた10秒の間、目を閉じていたロードラント軍の兵士たちはまったくのノーダメージ。竜騎士の乗った馬も暴れることはなかった。
それはおそらく、馬の目を保護するために付けられた鋼鉄製の
軽装備のイーザ騎兵との差がこんなところで出たのだ。
さらに後方から聞こえてくる、奇怪なうめき声。
これはやったか――
と、振り返る。
予想通り、そこに広がっていた光景は、数千のコボルト兵たちが手で目を覆い、地をのた打ち回る姿だった。
『スキャン』の魔法で調べた通り、コボルトは光には極端に弱かったのだ。
さらにコボルトは背丈が低いため、人間と戦う時はどうしても上向きになる。
その際『ルミナス』の光源がもろに目に入ってしまったのだろう。
これでコボルト兵の脅威はなくなった。
敵が視力を回復するまでにはそれなりの時間がかかるはずで、ロードラント軍が戦場から撤退する余裕は十分というわけだ。
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