(13)

 残る最大の懸念は――

 このまま僕が剣を収めたところで、果たしてセフィーゼたちは約束を守るだろうか?


 そこだ。


 セフィーゼが戦えなくとも、丘の上にはまだ二千のイーザ騎兵団が待機している。

 ヘクターかセフィーゼが合図を送れば、彼らはいつでも攻撃を開始するだろう。


 そうなれば、生き残ったロードラント軍は間違いなく全滅してしまう。 

 もちろんアリスとリナも……。


 それを避けるためにも、このままセフィーゼを人質に取ってしまうべきなのか?

 が、決闘デュエルが終わってから、降参した相手を捕まえるのはルール違反な気もする。

 怒ったイーザ騎兵が、セフィーゼを取り戻そうと攻撃してくるかもわからない。


 どうしていいか判断しかね、その場に立ち尽くしていると――

 アリスの声が聞こえた。


「ユウト、何をしているんだ? 戦いは終わったのだ、早くこっちへ来て勝利を祝おう!」


 ああ、やっぱりアリスは性格が良い。

 お嬢様育ちならぬ王女様育ちとでも言えばいいのか、人を疑うことを知らないのだ。


 僕はふっと体の力を抜いて、ショートソードを鞘に収めた。

 そして、何も言わずセフィーゼに背を向ける。


 アリスがセフィーゼを信じるのなら、僕も同じく彼女を信じよう。

 きっと大丈夫だ。


「セフィーゼ!」


 ヘクターがしゃがみ込んだセフィーゼの方へ駆け寄っていく。 

 二人は主従関係というより、親子のような絆で結ばれている感じだ。



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