(7)

 何というセフィーゼの魔法のコントロール能力!


 それ自体が鋭い刃物のような『エアブレード』の風は、剣を斬り結ぶアリスとヘクターの横をいったん通り過ぎ、ブーメランのようにぐるりと旋回した。

 セフィーゼは背後からきっちりアリスを狙ってきたのだ。


 しかし、アリスはヘクターとの戦いに必死でそれに気付かない。


 大丈夫か!?

 と、思ったその瞬間――


『Mガード』の魔法の壁が三度みたび効果を発揮した。

 虹色の風はまたしても、アリスを傷つけることなく瞬時に消えてなくまってしまった。


 それを見て僕は胸を撫で下ろした。が、『Mガード』の耐久力もそろそろ限界に近いはず。


 やはりこのままではダメだ。

 積極的に攻勢に出て、セフィーゼを倒さなければこの決闘デュエルは負ける。


 アリスも同じことを思ったのだろう。

 ヘクターと戦いながら、しきりに目配せを送ってくる。


(私は大丈夫だからセフィーゼを――)

 と、僕に伝えたいのだ。


 戦いが始まる前の話し合いで、セフィーゼは僕が、ヘクターはアリスが各々おのおの相手するように決めてあった。

 アリスがヘクターの動きを封じてくれている今こそ、セフィーゼを討つ絶好のチャンスだ。


 僕はアリスに(わかりました)とうなずき返し、自分自身に『アクセル』の魔法をかけた。

 素早いセフィーゼに対抗するには、こちらもそれなりのスピードが必要だからだ。


 魔法のバフ効果はすぐに現われ、自分でも信じられないくらい体が軽くなった。


 これならいける!

 と、僕はセフィーゼに視線を移した。


 距離はかなりある。

 セフィーゼは直接の戦闘は苦手。とにかく離れた場所から魔法だけを使っていたいのだろう。


 ――待っていろ、セフィーゼ!


 僕はセフィーゼに向かってダッシュを始めた。


 お前の風魔法が絶対ではないことを、今、思い知らせてやる!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る