33 本格始動

 分からないといえば、果たしてこの街を出て北へと向かうとして、次に寄れる様な街が何処にあるのか、全く把握していなかった。


「……それで俺達、この辺りの地理よく知らないんですよ。だからこの街周辺の事を教えてほしいんですけど……」


 流石にこの状態で街の外に出るのは無理がある気がしたので、近くの屋台で情報収集をしておく事にした。

 リンゴ飴購入を条件に教えてもらった情報を纏めると、ここから丸一日程歩いた所に街があるらしい。

 街の名称はレミール。ちなみにこの街はアルダリアスというらしい。さっき知った。

 とりあえずはそのレミールと呼ばれる街へ向かう事となる。

 情報を聞くだけ聞いた俺達は、店主に礼を言ってその場を離れる。


「とりあえず歩くって事でいいか?」


「はい。一応お金は大切にした方が良いかと」


 当然観光客が皆丸一日歩いてアルダリアスに来ている訳ではない。

 レミールとアルダリアスを繋ぐ為に馬車が用意してある。まあバスみたいな扱いだろう。

 当然それに乗れば楽に着けるがお金は掛かる訳で……今まで準備で金使いまくってた奴が言う事じゃないかもしれないけれど、少しは節約したほうがいいだろう。


「よし。じゃあ歩くか」


 そんな感じに俺達の行動方針は固まった。


「……しっかし、列車か」


 そして俺は目的地であるレミールの街の風景を想像しながらそう呟く。

 どうもレミールの街から列車が出ているらしい。

 この世界に列車が存在するという事がまず驚きだ。本当に、この世界の技術レベルがどの程度なのか把握しきれない。

 具体的に何がどう行われているのか分からないけれど、人間と同じように自立した意思のある精霊をドール化なんてできる技術がある事や、高い安全基準により建設された地下施設などがある事を考えると、実はこの世界は文化の発展の仕方が違うだけで技術レベルそのものは相当高かったりするのではないだろうか? 少なくともホテルに冷蔵庫とかが置いてある通り電気も通っている訳で。

 ……まあとにかく、その辺りは分からないけれど、これは俺達にとってチャンスだ。


「一気に距離短縮できんじゃねえのコレ」


 金がいくらかかるか分からないが、それでも期待くらいはしてもいいだろう。

 ……そう、期待できる。

 絶界の楽園を目指す事に、段々と現実味が沸いてくる。

 きっとそう遠くない未来に俺達は絶界の楽園に辿りついているのではないだろうか。


「お金、掛かりますよ?」


「まあ……その辺も、なんとかしよう」


 沸いて来た現実味を掻き消し現実に戻されるも、俺はそう返してエルの手を引く。

 手を引いて、やがて人が少なくなり手を離して街の外へと辿りついた。


「さあ、行くか」


「はい。とりあえず頑張って歩きますか」


「お、おう……やっぱ馬車乗りゃ良かったんじゃねえかな」


 これから休憩を挟みつつも丸一日歩かなくちゃいけない事を考えると、色々と後悔してしまったが、それでも俺達は歩きだす。

 さあ、本格的な旅の始まりだ。

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