第22話 エルフが逃げた先

「ふう……助かったぁー」


騒動の後、素早く逃げた俺たちは、ショッピングモール近くの人気のない店に入ることによって事なきを得ていた。

実際に、逃げている時も姉さんと未玖のお陰で、見られた人には超絶美少女くらいにしか思われていないだろう。まあ、それでも結構目立ってだが。


「それにしても災難だったわね。周りも悪意というよりエルに興味深々って感じだったし、本当に良かったわ」

「うん、えーくん帽子剥ぎ取られてたもんね。あっ、二着買ったからもう一つ帽子あったはず!ーーーーっと、はい、えーくんこれ」


俺は姉さんから帽子を受け取って頭に被った。


未玖が言っていた通り、俺に興味深々なだけで良かった。悪意があった時のことを考えてみるとゾッとする。うん、これ以上考えることはよしておこう。


「てか、ここは何の店だ?」

「確かに。見たところ、受付カウンターとエレベーターあるのは分かるけど……」

「ここって本当に入って大丈夫なのかなぁ?」

「うーん?」


俺は曖昧な返事を返した。俺にもよく分からないからだ。しかし、受付カウンターを覗いてみると、この店が何の店かがすぐ分かった。


「撮影スタジオね」

「撮影スタジオだな」

「えっ、撮影スタジオって撮影したりする撮影スタジオ?」

「いや姉さん、それ以外にどんなことをする撮影スタジオがあるんだよ」

「盗撮とか?」

「それは犯罪だぞ!?」

「なら堂々と?」

「いや、そうなんだけども!」


そんな風に姉さんにツッコミを入れていると、その最中、エレベーターの止まる音がした。

俺はその音と同時にツッコミをやめ、エレベーターに目をやった。

そしてエレベーターが開くと、中からは女性二人が話しながら出てきた。


「それにしても今日はすごい暇だわ。最近毎日忙しくて大変だったのに」

「忙しいといっても、スタジオを貸すだけですよね?しかも毎日一件か二件程度じゃないですか。

今更ゼロになったところで何も変わりませんよ。って、お客さん?」

「えっ?本当!?」


その女性は、そこで俺たちに気づいたみたいだ。そして、隣にいた女性もそれに少し遅れて気づいたみたいだ。


「ど、どうも」

「お邪魔してるわ」

「こんにちは!」


俺たちが女性二人に挨拶をすると、片方の女性は挨拶を返してくれた。しかし、その一方の女性は、何故かボッとしている。


「あの……オーナー?」

「か、」

「か?」

「可愛い!!」


オーナーと言われていた女性は、いつの間に俺の前に現れ、俺に隙も与えず抱きついた。


「うわぁっ!?」

「むぅ!この胸の柔らかな感触は……むふふっ、エベレスト級ですなぁ!しかもこの容姿、最高!!」

「ちょ、離れて!!」


俺は頑張って抵抗するが、結局この暴走は止まらず。

最終的には、姉さんと未玖が助けてくれたのだった。

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