第81話 「はぁい」「んん?」コミュ力高っ!
私がにゃんこにも普通に挨拶するので、たまに会話のように聞こえるらしいです。
「はぁい」と歩いてるスコちゃんに声をかけると、すこちゃんは「んん?」と言いながら通り過ぎます。
「どうしたの?」とつなぐと「ん!」と返ってきます。
これって一種のコミュニケーションじゃないですかね?
私、スコちゃんとなら、コミュニケーションできる気がしてきました。
今までも、体の動きで、スコちゃんは意図を察してくれた。
だから、カンチガイしてしまいそうだけれど、コミュ力高いのはスコちゃんで、決して私がテイマーの能力があるとかじゃない気がする。
あのペットサロンドリスからお迎えした猫は二頭目だけれど、どちらも人なれしていて、飼い主と向き合ってくれた。
アニマルセラピーじゃないけれど、そんなこともあるのかと思ってきた。
だけど、これは冗談でも偶然でもない。
あのペットサロンドリスの子たちは、総じて性格がよろしい!
日々、この子を幸せにするんだ、と決意を新たに頑張る、そんな気にさせられる。
ペットサロンのドアを押し開け、ふっと左横のショーケースを見たら、不思議そうな顔をしたスコちゃんと目が合った。
自然体でいい子だなと感じた。
あの日あの時あの瞬間に、強く欲しいと感じたのは彼女だったから、彼女は運命の猫なのだ。
さて、そのスコちゃんは、相変わらず流しやテーブルに乗っかる。
しかし、驚いたことに、母はそれほど気にしない。
食べ物があるところに近づかねばいいのだ、と。
不思議だ。
祖母も私も、決まったエリア内に近づかないようにと神経をとがらせて見張ってきたけれど、母の考えは柔軟だ。
そうか、猫にとってこの家の中は全部自分の所有物だから、入ってはいけないエリアがあるなんて、理解できないに違いない。
じゃあどうするのか?
母のように、食べ物に近づかれないように、皿を出しっぱなしにしたり、しないようにすればいいのだ。
これも一つの解決策だ。
母、ありがとう。
ダイスキ!
ここのところ、スコちゃんの歌を一日に一曲作っていたけれど、3、4つ聴いてもらって、母がいいというものを歌いこむことに決めた。
ベートーベンの「エリーゼのために」のメロディーで歌う。
「(スコちゃんの名前)はかわいい♪ 素敵だ♪ すばらしい♪ (同じく名前)はかわいい♪ きれいだ♪ おりこう♪ ら、らら、ら~~♪ かわいい! 素敵だ! すばらしい! ……」
と歌っているうちに思ったのだが、ベートーベンも案外、テレーゼという女の人を、こんなふうに思いながら作曲したのかもしれない、と。
だとしたら、この替え歌は、ベートーベンへの冒涜にはあたらないのではないか。
少なくとも私とスコちゃんを幸福にしてくれるのだから、リスペクトせずにはおれない。
うん、ベートーベンの「エリーゼのために」は好きだなあ。
めくるめく情熱の中に切なさを内包した恋に身を焦がす曲だと思う。
本当の解釈は知らないけれども。
今日は食後の休憩時間にTVの録画を観ていたら、スコちゃんが祖母の座っているイスの上にちょーんっとのっかって、ねそべったり、祖母の肩に前脚をかけて、襟足のにおいをかいだり、ソファに寝そべっている母の足元に控えめに丸まったりと、なんとか距離を縮めようと努力していた。
母は足をもぞもぞさせて、
「スコちゃんどけて」
というけれども、スコちゃんは母の足の下にいる。
どかすのならば、母の足の方だと主張した。
「なるほど……」
母は、眠そうにしながら歯を磨きに席を立った。
今日もスコちゃんの写真をとればよかったなと、少し後悔した。
昨日たくさん撮ったので、スコちゃんがスマホに慣れてきていて、いい感じのポージングをしてくれていたのに、残念だ。
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