第38話 2019/11/24/日 日常が幸せ
昼寝から起きたスコちゃんは、水を飲みに行く私にくっついてキッチンに来た。
案の定、祖母に「おんり! り!」「こっこっ!」「り、せんか! り、せんか!」とテーブルやカウンターから降りるように指導されている。
私が安全に抱っこすると祖母は「ほら、だっこされたったい!」と得意げ。
なんでなんだ。
そりゃ、私は甘い。
祖母は猫にきつい。
けれど、実力があるのは私だ。
実力もないのに、口ばっかりうるさいのには辟易している。
口うるさい人だな。
猫的にいって、キライ。
「今、レンジにササミ入れておいたから。冷めたら裂いて、エサでつって出すから、放っておいて」
と言ったのに、相変わらず口先ばっかり動かしている。
昔キライだったのに、親切にせねばならない人がいて、関わりたくなかったのだが無視することもできなくて仕方なくつき合っていた人にそっくり。
人間づきあいは本当に難しい。
スコちゃんが、「敵意はありませんから、優しくしてください」と、あいさつに向かったところ、祖母は振り払うようにしてソファから立ち上がった。
スコちゃんは「場所が空いた」というように、ソファにごろんした。
気の小さいおばばさまだな。
私は、冷めきらぬササミをレンジから出し、テーブルに漂っている冷気で冷ますようにして、スコちゃんのエサ皿にちょっぴりずつ裂いたササミを積み上げていった。
本当にちょっとずつ。
すると、ササミの裂きどころがちゃんと見えてきた。
最初の頃は、むやみと細かくちぎっていたが、ササミというのは指で押すと、自然とわかれるところがあるので、そこを重点的にいじっていると、自然と2~3ミリの太さの身になる。
結構くせになる。
しつこくしつこく、引き裂いて、この細胞は筋肉だったんだろうなとぼんやり思う。
できあがった。
ちょうどお皿に一杯。
これをもって、廊下のスコちゃんに声をかけた。
一度はまたもキッチンに入りこんで祖母に悲鳴を上げさせていたスコちゃんだが、私が廊下側から「ごはんだよ」というと、引き返してきた。
「行って」というと、先に立って部屋へ向かう。
これで柔らかいお腹を蹴ってしまったりしないですむ。
餌場に皿を置くと、完食。
そして、いつものご挨拶。
まん丸い目をして、ベッドの上の私を覗き込みに来る。
後、ベッドで毛づくろいをしてから、カラーボックスの上に寝そべる。
最近はケージの中でも寝てるみたいだ。
気持ちよく過ごしてほしい。
スコちゃんのかわいさは言うに及ばず。
私は手や顔をなめられつつ、とろんとろんにぼやけた意識で思う。
こんな日々が永遠に続いたなら、と。
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