第二十話 ワイナリー見学 その1

 ウニキャンで山を降りたら視界のゆるす限りに広がる平野と緩やかな丘陵地帯。そんな長閑な田舎道をトコトコと走る。北海道のような真っ直ぐな道が多い上に緩やかなアップダウンもあるのだが、基本的には平坦基調なので長く運転していると単調で眠くなる。


 現在、走っているところはワインの産地らしく、見渡す限りぶどう畑がずっと続いている。もっとも収穫も終わっているのでぶどうだと認識していないと門外漢にはわからないだろう。


 適度に休憩しながら道を進むとぶどう畑の中に佇む石造りの立派な家が見えてきた。家というより倉庫かな? 倉庫みたいな建物に囲まれた小さい館みたいな建物も見える。


「あれはなんだろうね? ちょっと寄ってみるか」


「わんっ」


 ナツの元気な返事に頷いて俺は前方に見える建物に向かってウニキャンを走らせた。


 建物の周囲はお洒落な鉄柵で囲んであるだけなので、中の様子が見える。敷地内には白っぽい石で積まれた倉庫のような奥に長く伸びた建物が建っている。横には小さめの建物が、こちらも奥に長く建っている。


 正門かと思われる門のところに行ってみると門の横に看板が柵に据え付けられている。看板には『モールトン・ワイナリー』と書いてある。


 ここはワイナリーか。ぶどう畑があるのだからワイナリーがあってもおかしくはないな。初めて見るワイナリーをしげしげと見ていると、門の向こうからオークが一人やってきた。


「こんにちは、モールトン・ワイナリーに御用ですか?」


「こんにちは。いや、ワイナリーを見るのは初めてなので、思わず興味深く見てしまったのです」


「そうでしたか。それなら良かったら見学しませんか? 当ワイナリーでは見学コースもありますよ」


「えっ!? 本当ですか!? ぜひとも見学させてください!!」


「それでは恐れ入りますが、あちら側が見学者の受付となっていますのお回りください」


 従業員の方の指示された方向にウニキャンを移動させて駐車場に停める。『ワイナリー見学者受付』と書かれた看板が掲げられた小屋があったので入ってみる。


「こんにちはー、ワイナリーの見学をしたいのですが」


「いらっしゃいませー、おひとり様ですか? こちらの見学申し込み用紙に必要事項を記入お願いします」


 俺は必要事項を記入する。見学自体は無料だが試飲には別料金がかかるようだ。ウニキャンを運転しないといけないので、今回は試飲はパス。ワインを購入することはできるようなので帰りにワインを購入して帰りたい。


 俺はワクワクしながら見学が始まるのを待った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る