第九話 焚き火台

 朝市からウニキャンに戻ってきたナツと俺は朝食を食べる事にした。


 いつものようにウニキャン内のキッチンで手軽に作ってもいいが、今日はキャンプらしいことをやりたい。


 今日は焚き火料理だ。焚き火といえばキャンプの定番。俺も夜になると焚き火をしては楽しんできた。ただ焚き火で料理を作るとクッカーが煤だらけになるので、今までは手軽なIHやガスで調理していたんだよな。


 焚き火と言っても色々とやり方がある。昔ながらの地面に直接薪を組み上げて火を付ける直火。ただ、近年は熱によって地面にダメージを与えることが問題になり、焚き火台や焚き火シートなどを使用して環境負荷を抑えようという流れがある。


 焚き火台には大きく二種類ある。それは焚き火そのものを楽しむ焚き火台と、焚き火で料理を楽しむものに特化した焚き火台だ。


 俺が普段使っているスノーピークの焚き火台は逆ピラミッド型のステンレス製で大きな薪を焚べて炎と暖かさを楽しむオーソドックスな焚き火台だ。英語だとファイヤーピットとか言われているな。


 トライポッドでケトルや鍋を吊り下げたり五徳を用意すれば料理も出来るには出来るが、料理専用の焚き火台と比べると焚き火を楽しむ方向性の方が強いだろう。


 他の焚き火そのものを楽しむための焚き火台としては有名どころではピコグリルやユニフレームのファイアグリルなどがある。


 今回は料理特化型の焚き火台を使う。料理に特化した焚き火台も各社から出ていて色々ある。こちらは英語だとウッドストーブと言われていることが多い。某キャンプマンガで有名になった笑’sのB6君は料理に特化した焚き火台といえよう。


 そこで俺が選んだのは5インチG2 Firebox stoveだ。見た目は名前の通りに縦長の箱型だ。高さは19cmで横幅は12cmぐらいの肉厚ステンレス製で重みもある。先日もFirebox nanoを使ったが、このストーブも簡単に展開してセットアップできる優秀なウッドストーブだ。


 肉厚ステンレスを使っているのでダッチオーブンを載せてもびくともしない。長時間高熱に晒されても歪みもない頑丈な本体。これが安い中華メーカーのウッドストーブだと鉄板は一回火を入れただけでべこべこになり、数回使ったら買い替えを検討するほどだが、Fireboxのユーザーは口を揃えて死ぬまで使えるというほど頑丈だ。


 流石に米国ユタ州でバックカントリーキャンプを楽しんでいる社長のスティーブが工夫して作り上げただけはあると感心したものだ。


 地面に焚き火シートを敷いてからFireboxを展開して設置。薪をブッシュクラフトナイフでバトニングして小割りにしていく。


 表札サイズのけやきの薪割り台の上に割りたい薪を置いて利き手と反対側の手にナイフを持ち薪の上に刃を当てる。この時、両足の間でやるのではなく外側でやるのがコツだ。足の内側には重要な太い血管があるので、万が一ナイフが太ももの内側に当たると重大な事故になる。


 利き手に他の薪を持ってナイフの刃の背の部分を叩くことで薪にナイフを喰い込ませる。喰い込んだら刃先の部分を叩いて薪を割っていく。


 使っているナイフは日本に昔からある剣鉈というナイフ。鉈として一般的によくみるのは腰鉈で、刃が長方形の形をしているが、剣鉈は刃をナイフ状に加工した鉈の一種で、猟師が山中で活動する時に狩猟解体、調理、草木の伐採までこれ一本で何でもこなした万能ナイフだ。


 小割りにした薪の一部はナイフで鉛筆を削るようにしてフェザースティックを作る。ヒガンバナっぽい見た目になったらフェザースティックは完成だ。フェザースティックを作る事で火が薪に燃え移りやすくなる。


 ファイヤースターター(火打石)を使って火をつける方法もあるが、今回は手軽に着火剤を使う。スウェーデン製のマッチ型着火剤ファイヤーライターが非常に便利だ。スティック状の着火剤の先端にマッチの頭薬と同じものが付いているので、マッチと同じように着火できるという便利商品だ。


 小割りの薪とフェザースティックをロストルに積み上げたところに着火剤を投入して火をつける。すると着火剤の炎が徐々に小割り薪に燃え移る。俺は薪を投入しながら火を育てていく。ある程度焚き火が育ったら調理開始だ。


――――――


注)欅はとても固い木として有名。


参考動画

【ナイフの使い方】キャンプでバトニングから火起こしまでを学ぶ【初心者必見のナイフ術】たけだバーベキューTV

https://www.youtube.com/watch?v=dka8RLOK534

【誰でもできる】フェザースティックの作り方〜火起こしまでを学ぶ【達人に教わる】たけだバーベキューTV

https://www.youtube.com/watch?v=tkWL27sVwB0

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