04.露天風呂を組み立てよう!

 キャンピングカーなのでキャンプの設営と言っても日除けを組み立てるぐらいしか無いのだが、今回は一仕事ある。


 キャンピングカーを作る事になって室内設備を決めていた時にシャワーはなんとか組み込んだけれど風呂は組み込めなかった。広さは決まっているので風呂までは難しい。


 風呂付きのキャンピングカーとなると大型の観光バスを改造したものとかトレーラーハウスの様な大型のものになってしまって俺の欲しかった機動力のある物とは違ってくる。


 そんな時に思い出したのはニュースで見た陸上自衛隊の組み立て式の風呂『野外入浴セット』の存在。野外で風呂を提供できて被災地にて好評な陸上自衛隊の主力装備だ。ちなみに海上自衛隊は陸自より簡易な『緊急展開型入浴セット』を装備している。


 『組み立て式』と『風呂』でネットで検索してみたら組み立て式の風呂を幾つか見つける事が出来た。アルミパイプを箱型に組み立てて防水のターポリンシートを張る事で浴槽とする簡易風呂。これでも良かったのだが、検索の並びにあった『組立式露天風呂キット』を見てみたら檜の枠組みを組み立ててターポリンシートを張る浴槽。さらに薪焚き式の風呂釜付きという所に気になってしまって、暫く悩んだが思わず発注してしまったのだ。後悔はしていない。


 その『組立式露天風呂キット』を今から組み立てようというわけだ。組み立てはログハウスを作るような感じで檜の板を交互に組み上げて内側に保温シートを張った上にターポリンシート張って風呂釜を風呂に固定。風呂釜に別パーツの煙突を据え付ければ完成だ。


 浴槽に水を張って、風呂釜に薪をべて湯を沸かす。


 その間に晩飯の準備をしよう。晩飯は塩焼きの魚とご飯と味噌汁というシンプルな物にした。この眼の前に広がる大自然の前では気取ったり凝った料理は無意味なんだ。と言うのは建前で馴染みのある料理をサクッと作りたかっただけだ。


 ナツと一緒に晩飯を食べている間に風呂も沸いたようだ。ナツと一緒に体を洗って湯船に浸かる。


「ふ、ふぇ〜」


 なんともだらし無い声が出るが、それが風呂と言うもんだ。周りにはナツ以外は誰もいないので気にしない。まだ日没前の綺麗な海を見ながら風呂に入るのは気持ちが良いもんだ。『組立式露天風呂キット』は衝動買いだったけれど良い買い物をしたもんだと自画自賛してみる。製造元も、まさか異世界で使われているとは思いもしないだろうなと思うと自然と笑みが溢れる。


 風呂から上がるとナツは体をブルブルさせて盛大に水飛沫が飛ぶので慌ててバスタオルで拭いてやる。


 風呂を十分楽しんたので、明日の朝も風呂に入ろうと思うのであった。


 翌朝、もちろん朝風呂に入ってから露天風呂の片付け。排水口が付いているので栓を抜けば湯が抜ける。片付けも組み立て同様簡単なので撤収も容易い。


 キャンプで広げたものを全て片付けて撤収準備が終わったらナツの散歩に出かける。崖の横に下の砂浜に降りれる階段があるので降りていく。ここは崖地ではあるのだが、所々に窪地があって、そこは砂浜になっているのだ。


 砂浜に解き放たれたナツは全力で走り回って遊んでいる。もう元気過ぎるので追いつくのは無理になってきたので眺めているだけだが、それはそれで楽しいものだ。


 ナツさん、全力で俺の腹に突撃するのはそろそろ止めてくれないかな?


(作者注)

『組立式露天風呂キット』は実在する商品です。

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