第96話 女神見習い、街の家をアップグレードする(1)


 数日前、メルさんは後ろ髪を引かれながらも天界へ帰っていった。


 「次はもっと長くいられるように頑張るからー」

 

 と言っていたけど、どういう意味だろう?ま、いっか。


 リディもメルさんが帰ってからは少し寂しそうで、時々庭にある木像の前に佇んでいる。うん、木像そっくりだもんね……その姿を見たらメルさんすぐにでも戻ってきそうだよ……まぁ、その分アルさんがリディを独り占めしてるんだけどね……いや、ブランも一緒だから違うか?


 畑にまいた土もいい感じなので、残りの区画にも土をまいておく……意外と重労働。

 それでもまだまだストレージに土が残っているので、キュリエルにも分けてあげよう。街の家の花壇とか世話してるのキュリエルだもんね。


 「リディ、ちょっとキュリエルたちのところ行くけどどうする?」

 「ん、わたしも行く」

 「あ、そうだ。ついでにポーションの納品と素材の買取も行こうかな?」

 「ん……羽があるからわたしも」

 「リディも行くなら、見習いのことも聞いてみよっか?」

 「ん」


 出かける準備を済ませ……テーブルに神の宿屋を訪ねてきた神様宛に夕方までには戻ることと1階は埋まっているので2階の好きな部屋にどうぞという旨のメモを残しておく。……というのもメルさんが自分が泊まった部屋に他の神を泊めないでお願いされたので。うん、作ったのメルさんだから仕方ないね。1階はあとは倉庫になりそうな狭い部屋しかないから必然的に2階なんだよ……これでもし突然神様が来たとしても大丈夫だ。


 「おっ、リディ。アルさんにもらったローブ似合ってるよ」 


 うん、可愛い……さすがアルさんわかってるね!


 「ん、ありがと」

 「じゃ、行こっか」

 「ん」


 早速、街の家へ瞬間移動……


 「ふぅ……キュリエルー?」

 「あれー、今日はどうしたの?」

 「うん、用があって……あのさ、まずは土あげるね」

 「つち?」


 キュリエルは不思議そうに首を傾げた……あざとい。


 「うん、ダンジョンでゲットしたやつなんだけど……畑で使ったら結構良かったから庭の花壇にどうかなーって」

 「へー、ありがとー」


 さっそく、庭に移動し土を出していく……


 「ん、ユリスさんは?」

 「んー、また工房にこもってるかな?」

 「ん、わかった」


 そういえば、まだ素材あったなぁ……これが終わったらいるか聞いてみよう。


 「おー、これ結構いいかもね?」

 「でしょー?……それでさぁ、キュリエルにちょっと相談があるんだけど……」


 どきどき……


 「なに?まさかこの土は賄賂なわけ?」

 「そ、そんなことないけど……」

 「はぁ……で、相談ていうのはなんなの?」

 「うん……あのさ、この家のお風呂とかトイレとか新しくしてもいいかな?」


 キュリエルがこの家を大事にしてるのわかってるから言いづらいけど、毎回簡易トイレを出すのも……ね?

 やっぱ、だめかなー?


 「うーん……わかった。相談してくれたから許してあげる」

 「えっ、いいの?本当に?」


 ダメ元だったのに、こっちがびっくりだよ。


 「うん、いいよ。でも、これからもこの家に何かするときはちゃんと言ってよ?」

 「ありがとう。わかった!ちゃんと相談するね?ちなみにさ、お風呂が天然石とヒノキで選べるけどどうする?」

 「んー、ヒノキかな?僕一応、風の精霊だからさー……」

 「へー、そうなんだ……わかった。ヒノキにしよう。冷凍機能付き冷蔵庫とかもあるけどいるかな?……これは台所に置くだけだから家に傷はつかないよ」

 「ねぇ、エナ……冷凍機能付き冷蔵庫って何?」


 あー、そうか……んー……


 「なんて言えばいいかな……えーっと冷蔵庫っていうのは食べ物の鮮度を落とさずに保存しておける……みたいなかんじ?あ、もちろん長期間はダメなんだけど」

 「ふーん……冷凍は凍らせるってこと?」

 「そうそう……凍らせて保存できる箱と低温保存の箱が合体してるって感じかなぁ?」


 うん、多分そんな感じだろう……実物は見てないからわからないけども。


 「へー……台所はユリスに任せてるから、ユリスがいるって言ったら好きにしていいよー」

 「わかった」

 「ていうかさ……エナ。突っ立ってないで土まくの手伝ってよ」

 「あ、ごめんごめん」


 花壇にせっせっと土をまいたら……ていっても花壇、結構あるから時間かかったんだけどね。ユリスさんの工房へ……


 「こんにちはー……あれ?リディ、ブラン。工房にいたんだね?」

 「ん、ちょっと用事」

 「そっか」


 へー、リディもユリスさん相手なら普通に話せるようになったんだ。よかったよかった。


 「ユリスー……なんかエナがこの家の設備を整えたいんだってー」

 「え、そうなんですか?」

 「あー、といってもトイレとかお風呂だけすけどね」

 「へぇ……」

 「ん、お風呂……さいこう」

 「でさー……なんか冷凍機能付き冷蔵庫とかいうのいるかって聞かれたけど、どーする?」


 ユリスさんはいまいちピンと来ていないようなので、先ほどと同じようにユリスさんに冷凍機能付き冷蔵庫の説明をすると


 「すごいですねっ……ですが、それってかなり貴重なものなんでは?」

 「さぁ?ユリスさんが気になるなら、美味しい料理を作ってくれるお礼と考えてください」

 「そうですか……私としてはぜひお願いしたいです」

 

 よし、そうと決まればポイント交換……する前に


 「そうだ。この前渡した素材と似たような素材、たくさん残ってますけどいります?」

 「いいんですか?……ですがもらいっぱなしは……」

 「どうせ私は使わないので気にしなくても大丈夫ですよ?」

 「では、ありがたく……エナさんが必要なものがあればなんでも言ってくださいね?最優先で作りますから!」

 「ありがとうございます。また、思いついたらお願いしますね」

 「はい!」


 ストレージの素材の内、ユリスさんが使えそうなものは全て渡しておいた。どうせ、わたしは使わないし問題ない。

 あとの素材はギルドで売り払ってしまおう。


 うんうん、これでだいぶストレージの整理ができた。


 さて、家のアップグレードのためにポイントを交換しようか。感謝ポイントかもーん!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る