第86話 女神見習い、ダンジョンへ行く(2)

 「そういえば、今回のダンジョンてどんな構造なんですか?」

 「深淵のダンジョンは浅い階層は初心者向けだけど、下へ潜れば潜るほど危険で難しいダンジョン構造で有名って話はしたわよね?」

 「はい」

 「下へ行くほど奥深く道も複雑になり、内部が計り知れない様子から深淵のダンジョンと付けられたの。1、2層までなら初心者向きなんだけど……もちろん油断すれば命を落とす可能性もあるわ」

 「はい」

 「基本的にダンジョンは内部の構造や広さ、階層もまちまちで共通しているのは最奥部にボスがいること。このボスを倒すと迷宮の攻略が認められてなんらかの恩恵を受けられるらしいわ。ただし、ダンジョンのどこかに隠されているコアを破壊しない限りしばらく経つと新たなボスが作り出されるそうよ」

 「へー」

 「ボスを倒さなければ半永久的に素材や資源をゲットできるからうはうはだよ?」 

 「はぁ……その実力があればだけどね。あとはダンジョンでは魔物を倒すとドロップ品を残し、他はダンジョンに吸収され消えてなくなるから解体の必要がないの」

 「わー、それはいいっ! ものすごくいいっ!あ、そうだカーラは知ってると思うけど、私のマジックバックはかなりの量が入るので荷物とかドロップ品はお任せを。あ、これ周囲には内緒でお願いします。命を狙われたりしたくないので」

 「「わかった((それってつまり命が狙われるほどの容量の貴重なマジックバックってこと?))」」

 「それと、本来なら1泊してからダンジョンに挑むんだけど、状況が状況だからついたらすぐにダンジョンに行く予定なの」

 「うん、大丈夫」

 「5層までは最短距離で駆け抜けてそこで1泊の予定……」

 「わかった」

 「でも、行けそうならもっと進むかも?」

 「……その可能性もあるわ」

 


 さて初ダンジョンです。どうか材料が見つかりますように。そしてジョセフの弟が間に合いますように…



 ◇ ◇ ◇



 「とりあえず休憩しつつ食事取っちゃおう」

 「「「「はーい」」」」




 現在ダンジョンの5層。言葉通り駆け抜けましたよ、ええ。6層に続く階段があるという小部屋で休憩中。


 ダンジョンを少し振り返ってみる……


【1層】

 ほぼスライムしか出ず。ドロップ品はスライムゼリー、魔核など……

 3層まではヒカリゴケのおかげで明るいらしい。明かりに使う魔力や装備の節約が出来るから初心者でも安心なんだって。

 上からスライムが降ってくることに注意し、戦闘は最小限で走り抜けた。

 初心者は突然降ってきたスライムにパニックになり顔を塞がれ窒息してしまう場合もあるんだとか……地味に酸でやけどもするらしいが1層付近では初級ポーションで治る程度のやけどらしい。


【2層】

 この層ではラージスライムとアントが多数。アントの数が多いらしい……らしいというのもカーラがギルドで魔物避けの魔道具を借りてきたので出会い頭でもない限りある程度の魔物は避けていくんだって。

 出会いがしらに遭遇したわずかな魔物も前衛のメンバーが吹き飛ばし、他がドロップ品を回収するという見事な流れだった。ドロップ品はスライムゼリー(上質)、酸液、牙、羽、蟻酸、魔核など……うん、ほぼついて行くだけだけど走りっぱなしは結構きつい。


【3層】

 この層は出てくる魔物は1種類のみ。ただし部の者にとっては鬼門。

 理由は魔物はG。まさにGそのものだから。しかもデカい。手のひらほどの大きさのGがそこら中ガサゴソ動きまわる。

 カーラの魔道具のおかげで出くわすことはあまり無かったけど、どこからかガサゴソと背筋がゾッとする音が響いていた。

 基本的に数が多くしぶといらしい。ドロップ品は足、魔核など

 似ているのかそのものなのかわからないが鑑定もしたくないしGでいいよ。この時ばかりは魔物避けの魔道具があってよかったと心から思った。うん、疲れも吹っ飛びメンバーの背中だけを見てひたすら走り続けたよ。


【4層】

 牙ネズミとアントが多数。だいぶヒカリゴケが少なくなったけどギリギリ道が見通せるくらいの光量はあった。

 基本的に魔物数が多く、アントは毒持ちがチラホラいるので注意しなければ行けないらしい。うん、上位ランカーってすごいんだね……なんか、わたしが気づく前にドロップ品に変わってることがほとんどだったよ……ドロップ品は牙、肉、皮、魔核/羽、牙、蟻酸、魔核など

 3層に比べるとぜんぜん余裕だったよ、気持ち的に。うん、他のメンバーが取り損ねたドロップ品を拾うくらいの余裕はあった。


【5層】

 この辺りからは明かりが必須。

 バットが暗がりや背後から飛び出して襲ってくる。ドロップ品は羽、牙、爪、魔核など……1部吸血能力を持つ魔物もいるため注意しながら進むと小部屋に到着。休憩をとる。現在ココ。


 「昼過ぎに潜って……今夕方くらい?早すぎる」

 「まあ、戦闘が少ないからね…」


 それだけではないと思う。分かれ道でも間違ったことはないし判断も早い、体力もかなりあるんだろう……私は荷物も持ってないのにヘロヘロだよ。きっと私がいなかったらもっと早く進んでいたはず……さすがBランクパーティ。


 「あ、ドロップ品とか預かりますけど」

 「お願い」

 

 それぞれかなりの荷物が軽くなったところで


 「そういえばトイレとか大丈夫?」

 「あー、陰でするしかないよ……嫌だけどね」

 「同感……」


 うん、わかるよその気持ち。男性陣はそこまで気にしてないみたいね。

 ごそごそ……テッテレー、簡易トイレー。


 「トイレ使います?」


 ((((はぁ?))))


 「……えと、それ何?」

 「これですか? 持ち運び用トイレですけど」


 あー、そっか外見からじゃ分かりにくいか。扉を開けてみせる。


 「え?ちょっ……本当にトイレだ……」

 「うそだろ……」


 私も行きたいから早くしてほしいなぁ……そわそわ


 「で、使います?」

 「「「「是非!」」」」


 あれ、あんまり気にしてないはずの男性陣まで……まあいいや。


 「終わったら、後ろにあるボタン押してくださいねー。あ、シャワーもあるよー?」


 ダンジョンで泊るかもしれないって聞いて、一応持ってきたんだー。


 ((((この人、やることが桁違いすぎる))))

 こうしてメンバーにエナの異質さ?が再確認されたのであった。



 そういえば小部屋には階段があるということだったが……


 「ジョセフ、階段はどこに?」

 「ああ、ここは……あそこにあるくぼみに部屋にある石版を順番通りにはめ込むと階段がでてくる仕組みなんだ」

 「へー」

 「組み合わせがわからなくて引き返すパーティもいるらしいけどな」


 脳筋パーティのことかな……ジョセフが説明しながらさっさと石版を拾いくぼみにはめ込み階段が出現。


 おおー、まさにダンジョンって感じだぁ……

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