第84話 女神見習いと受付嬢のお願い(3)
宿屋はアルさんとメルさんがいるけど、リディ1人でもなんとかなるだろう。ブランもいるし。
あのふたりならリディがちょっと頼めばすぐに解決してくれるはず……だってあのふたり、リディのことがお気に入りで毎日のようにお土産を持ってきて仲良くなろうと頑張っている。
メルさんの方が若干劣勢だ。
やはり、初めて会った時に思いっきり抱きついてしまったことが大きいみたい。最近は適度な距離を保ちながらブランを仲間に引き入れつつ、いまいちよくわからないお土産(人形を持ってくるがそれが不気味)を持ってくる。日に日に増える人形は心なしか私たちに似ている気がする。
女神様曰く、多少なら瘴気を吸収してくれる逸品でしかも手作りらしい。人形をそばに置いておけば、もしも瘴気が発生した場合に他人与える影響がグンと減るらしい……すごい……
アルさんは最初から適度な距離を保ちながらも視界には入る位置に陣取り、徐々に距離を詰めていった天然人たらしである。
アルさんはいつも小さな花束や髪留めなどを持って来てこっそり渡している。
実はプレゼントの不気味な人形たちはリディ部屋に飾ってあり、髪留めは時々大切そうに眺め、街へ出かける時は付けて出たり、花束は押し花にして机にしまってあるのを私は知っている。他の人の前ではそんなそぶり見せてないけどねー。
ふたりが知ったら大変喜びそうだが、今は秘密……だって私にはお土産くれないんだもん。ふんっ。美味しいご飯で大喜びするっていうのに……
まぁ、それは置いといて……万が一、急に宿に神様が泊まりにきてもあのふたりがいれば心強く、宿でくつろいでいたアルさんとメルさんリディ、ブランに相談したら快く引き受けてくれたのでお任せすることになった。
リディも呪いが原因かもしれないと聞いて不安そうだったけど、解呪ポーションの材料が手に入るかもしれないと知りブランとともに留守番を頑張るそうだ。
リディとブランの食事はアルさんとメルさんにテイクアウトをお願いしておいた。一応冷蔵庫にも何か入れておこう。
メルさんがあの子は早くしないと危ないかも。と話していたのでやはり……あまり猶予はないみたい。
もちろん、キュリエルやユリスさんにも大まかに事情を説明しておいた。
ユリスさんは食事を作りだめして工房で物作りに集中するそう。
うん、頑張って。キュリエル、あんまり邪魔しないようにね……
◇ ◇ ◇
翌日ーー
ジョセフの弟に会いに行くため、待ち合わせ場所である冒険者ギルドに向かった。
少し早めに来たつもりだったけど、既に待ち合わせ場所にはジョセフとステラも一緒にいた。
「お待たせしました」
「いや、俺たちが早く来すぎただけだから気にするな。それにわざわざ来てもらうんだからさ」
そうだよね……弟のことを思えば私でも気が急いたはず。
「いえ、私がお願いしたことですし」
少し困った顔をしたジョセフ……
「早速だけど、家に案内するよ」
「はい」
冒険者ギルドを出て少し奥まった路地を入り進んだところに彼の家はあった。
部屋に通されジョセフの弟のジャックを見ると、顔色が悪く呼吸も浅い。意識もないようだ……やはりメルさんに聞いた通りあまり時間がなさそうだ。
理由をつけてジャックと2人にしてもらい、浄化の魔法を使う。
『浄化』
……先ほどより少し顔色がよくなった気がする。
あまり人に使ったことがないので心配したけど、少しでも効果があったようでほっとした。
リディには1日1回しか効果がないけど念のためもう1度重ね掛けしておく。
回復と加護もかけておこう、効果はあるかわからないけど。
朦朧としつつも意識が戻ったジャックに
「わかりますか。これ、辛いだろうけど飲んで」
これは昨日約束を取り付けてから、感謝ポイントで上級セットを交換して作っておいたので多少は効果が出ると信じたい。
「……ん、うう…ん」
なんとか飲みこんでくれた。良かった。
ポーションを飲み終えた頃ジョセフとステラが戻ってきた。ふぅ……
「ジャック、ジャックっ! わかるかっ?兄さんだぞっ」
「ん……兄さん……」
ステラが転がっている瓶を見て
「ねぇエナ、このポーションって上級じゃないの?」
「ええ、運良く材料が手に入ったので作ってきました。よくわかりましたね……」
「……少しポーションの色が違うから。鑑定を持ってない私たちには騙されないように少しの色の違いで判断するのよ」
「へえ、そうなんだ……」
「すまん、この代金も必ず払うから」
「いえ……私ももらったようなものですし……」
感謝ポイントはみなさんの感謝で成り立っているのでね……あながち嘘じゃないよね?
顔に先ほどより血の気が戻り意識もしっかりしてきたのを確認した2人や、家族にまたたくさんお礼を言われてしまった。まだまだ危険な状態なのは変わらないのに。
多分持ってきた上級、中級ポーションとメルさんの浄化であと5日ほどは時間が稼げるだろう。それまでになんとかしないと。
「毎日、必ずポーションを飲ませてくださいね」
「ああっ、わかっている」
「……まさか常連のお嬢さんがギルド公認のポーション職人だったとはね」
そう、余談だが……ジョセフとジャックの両親はよく行く屋台のお兄さんとお姉さんだったのだ(そう呼ばないと反応しない彼ら)
最近あまり姿を見なかったはこのせいだったのか……
「ええ、こんな縁もあるんですね」
「本当にありがとう」
「いえ、それはジャックが元気になってから聞かせてもらいますね」
「ええ……」
「ああっ!ジャックが元気になったらお嬢ちゃんは一生半額で食べさせてやるからな」
「はい、楽しみにしてますね! ポーションは多めに持ってきてあるので遠慮せずにどんどん飲ませてくださいね」
「エナ、本当にありがとう」
「いえ、ダンジョンでは役に立てませんから」
「安心して……必ず守るから」
「ああ、必ず」
「ステラ、ジョセフ……ありがとう」
早々にジョセフの家から退散し街で必要なものを買い込み明日に備えた。
お肉や料理などリディの食材は家の冷蔵庫と冷凍庫に入れておいたし、温かいものリディのバッグに入れたので何とかなるだろう……あとのことはアルさんやメルさんにお願いしよう。
◆ ◆ ◆
【ステータス】
種族:女神(見習い)/人族
氏名:エナ・ハヅキ
状態:通常
体力:400/400
魔力:55500/55500
運:75
冒険者ランク:C
商業ランク:☆
スキル
・火属性魔法レベル2
・水属性魔法レベル3
・風属性魔法レベル3
・地属性魔法レベル3
・光属性魔法レベル3
・回復魔法レベル3
・状態異常無効レベル4
・接触防衛レベル2
・火属性耐性レベル2
・水属性耐性レベル2
・風属性耐性レベル2
・地属性耐性レベル2
・光属性耐性レベル2
・闇属性耐性レベル2
・体力自動回復(中)
・魔力自動回復(大)
・成長経験値上昇(大)
・精霊魔法 レベル2
・瞬間移動 レベル3
・料理レベル2
・栽培レベル3
・解体レベル1
・修繕レベル3
・世界地図レベル3
特殊スキル
・女神の祝福レベル3
・女神の浄化レベル3
・女神の調合レベル3
・女神の心眼レベル4
・女神の聖域レベル4
・言語翻訳
・感謝ポイント〈117154ポイント〉
累計〈121184ポイント〉
ー称号ー
巻き込まれし者・当選者・女神見習い・中堅冒険者・ギルド公認ポーション職人・神様の宿屋主人
ー加護ー
慈悲の女神フィラの加護・慈悲の女神の部下コルドの憐憫・大地神アルネルディの加護・愛の女神メルディーナの加護・精霊キュリエルの友誼・調和の神モニークの加護・秩序の神オルドルの加護
その他機能【交信】【履歴】
◆ ◆ ◆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます