第47話 女神見習い、服を買う(1)


 ギルドへ行くと


 「あ、エナさん! お久しぶりです」

 「カーラさん、おはようございます……ポーションを」

 「はい! どうぞこちらへ」


 いつものように奥の部屋でポーションを売り、カーラさんにギルドへ来なかったことを心配されつつちょっと気になっていたことを聞く……


 「そういえば、街なかに魔物って入れないんですかね」


 いや……リディが街に入るってことはブランもいないとダメでしょ……そもそも街に入った瞬間にブランが攻撃されるとか悲劇にしかならない……ブランが攻撃される→リディから瘴気が発生→街の半数が体調を崩す……みたいな。


 「いえ、一概にそうとは言えません。この街にはいませんが……王都には馬よりも早く強い魔物が馬車を引くこともありますから」

 「へぇ……」

 「でもどうやって見分けるんですか? 野生かどうか」

 「あー、それはですね……主従関係にある場合はギルドに従魔登録していただければギルドカードに表示されるので問題ないです……ですが魔物を制御出来ないのにギルドへ連れてきて、そこで魔物が暴れたりすると冒険者に倒されますので……」


 あー、後味の悪いことになりそうだね。んー……ブランはリディのためなら暴れないはず……多分。


 「そうですか、わかりました……そのうち連れてきますね」

 「……えっ?」

 「あ、わたしが従えてる魔物じゃないんですけど……その場合って本人の冒険者登録必要ですか?」

 「……あの、エナさんのお知り合いに魔物を従えている方がいて……その方をそのうち連れてくるということですか?」

 「そうです! あ、まだ12歳なんで後見人は私がします」


 あれ、なんかカーラさんパニック? 頭抱えちゃったけど……確か13歳までは後見人が必要だったよね?


 「わ、わかりました……それはやはり主従関係にあるご本人の登録が必要です。できれば連れてくる日付を教えてもらえるとありがたいです……この街では従魔はそこそこ話題になりますから」


 あー、リディ目立つの嫌がるだろうな……


 「んー……まだ決まってないので、決まったらまたお知らせしますね……あと、出来るだけその子を刺激しないでほしいんです……目立たないほうが嬉しいですね」

 「……では、ポーションの買取という口実で奥の部屋を使いましょう……魔物は部屋に入るサイズですか?」

 「あ、平気です。鳥なんで……あと多分、今までよりギルドにくる頻度が開くと思います」

 「そうですか……エナさんのポーション人気ですぐに無くなるんですけどねぇ」


 2、3日に1度が5日に1度になったってそんなに困らないと思う……その分、量も持ち込むし……なんかマルガスさんとカーラさんは多少マジックバッグから多めに出しても大丈夫そうなんだよね……


 「エナだからな……」「エナさんですから……」とは言われそうだけど。



 「そうだ……ちなみにこの街って髪の毛とか瞳の色とかで差別されたりします? 他の土地ではあるって聞いたんですけど……」

 「あぁ、その土地って帝国ですよね?」


 リディって帝国から来たんだ……あんまり思い出したくないみたいだから聞いてなかったわ……


 「んー……ですかねー?」

 「……帝国では黒い髪に赤い瞳は不吉で近寄ると呪われるとまで言ってるらしいです……逆に銀髪に紫の瞳は崇拝されるとか……まぁ、帝国では今でも呪いが身近にあるそうなので信じられてるんでしょうね」

 「へー……そうなんだ」

 「リタール王国では特に外見で差別をするようなことはありませんね……ただ珍しい色だと注目はされますけど……例えば黒髪は少なくてもいますし藍色やダークブラウンは結構いるのでそんなに注目はされません。ですが赤い瞳は滅多にいないので……」

 「注目されるんですね」

 「ええ」

 

 そっか……ブランは外套の中で大人しくしてもらえば目立ずに済んでいいけど……リディの瞳の色か……


 


◇ ◇ ◇



 「こんにちはー」

 「おや、エナちゃん久しぶり……食事かい?」

 「あ、それもあるんですけど……お持ち帰りのお願いとサイズの豊富な服屋さんを教えてほしくて」

 「あっ!エナお姉ちゃん! 今日もお泊まりなの?」


 あー……恐れていたこの時がやってきてしまった。


 「ごめんね。今日は泊まりじゃないんだ……」

 「ふーん、そっか。じゃあまたねー」


 意外とあっさりしてらっしゃる……それはそれで少しさみしい。うっ、ダメージが……


 「で、ですね……お持ち帰りの量を前の倍くらいは欲しくて……あ、できれば野菜とかお肉とかバランスがいいと嬉しいです。もちろんお代は払いますので」

 

 親父さんに向けて言うとコクリと頷き親指を立てた……なんかブラッドベアのお肉の件以来ほんの少し打ち解けた気がする、うん。


 「料理は大丈夫みたいだね……で、そのサイズが豊富っていうのは大きい方に? 小さい方に?」

 「あー……ミーナちゃんよりふた回りくらい大きめで」

 「そうかい……市場の近くの洋服店か、ちょっと値段が高くてもいいなら商業ギルドのそばにある店もおすすめだよ。こっちは少し前にオープンして色々幅広く扱ってるから……」


 あれかな以前開店すると行っていた商人さんの店舗のことかな。


 「ありがとうございます! お昼食べたら早速行ってみますね」

 「持ち帰りは買い物の帰りにでも寄ってくれると出来てると思うから」

 「わかりました。そうします」



 早速、市場のお店へ行ってみる……


 「いらっしゃい」


 やっぱりここも古着がメインかな……ライトブルーのワンピースと寝巻き、生成りの上着とこげ茶の7分丈のパンツ、リディのブーツを購入。もちろん足のサイズは測ってきたよ……ブランが。リディ遠慮してなかなか教えてくれないんだもの。

 こっそり教えてもらうの大変だった……意思疎通の面で。最終的にブランがちょっとプリプリしてたよね。

 


 フードのついた外套がサイズのちょうどいいものがなかったので……フードなしのは結構あったんだけど、フードは必須だから。

 商人さんの店舗へ向かうことに……ちょっと高級すぎたらどうしようってドキドキ……


 「いらっしゃいませ」

 「こんにちはー」

 「あら、あなた……」

 「お久しぶりです。あの時はどうも」

 「来てくれたのね? 嬉しいわ」


 やはり上品な人だなぁ……あ、奥から旦那さんも出てきた。


 「お、来てくれたのか……好きに見てってくれ」

 「はい」


 こちらは新品らしく……サイズが合えばお買い得って感じみたい……多分オーダーメードで作られたんだけどお金が支払われなかったとか気に入らないからキャンセルとかそうものだと思う。

 価格もそこまで高くない。よかった……ありがとうキャンセルした人!

 リディサイズの黄色のワンピース、下着や靴下、フードのついた外套を選び購入する。


 「あら、お嬢さんには小さいわよ?」

 「ええ……一緒に暮らしてる子のものです」

 「そうなの……じゃあこれはサービスね」


 飾りのついた髪を結ぶ紐を2本付けてくれた。


 「ふふ、お揃いっていいわよね……」

 「ありがとうございます」

 「また、来てちょうだいな」

 「はい!」


 いやー、いい買い物できたな。

 リディが着たらコンテスト優勝間違いなしだね(何の?)……いや、ライバルはミーナちゃんかな(だから何の?)

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