第37話 女神見習いの1日(1)

「……ふぁああ」


 小屋へ朝日が差し込み自然と目が覚めた……天然の目覚まし。

 

 「うわー、身体がバキバキ……」


 ベットの上でストレッチ……したら家の結界のチェック……


 「まだ大丈夫そうだけど……張り直しておこう」


 これは安全性を高めることと、魔法の練習を兼ねて毎日行ってる……結界自体は多分1日半くらいは持つかな?

 ちなみに小屋の結界は私以外の通り抜け不可に設定してあるから留守中も安全……

 結界を張り終えた頃、大体お腹の虫が騒ぎ出すので朝食にする。

 もぐもぐ……うまー。


 「もうそろそろ買い出し行かないとな……」


 朝食後は腹ごなしも兼ねて採取に励み、腰が痛くなってきたら回復魔法をかけつつ周辺の地図を埋める。もちろん女神の聖域は展開している。

 ある程度採取が終わったら……魔法を練習する。


 「よし、この辺ならいいか……」


 

 この森には強い魔物もいるみたいだけど、襲われないかぎり放置することに決めている。

 もし、襲われた場合は一応反撃して倒せたらそれでよし、倒せなかったら速攻瞬間移動で逃げる……予定。

 あとは誰かに助けを求められた場合どうするかだけど……あ、そこ!こんな森の奥に助けを呼ぶ人なんかいないとか言わない!心構えの問題だからねっ?

 やっぱり女神見習いとしては助けるべきだよねー……まぁ大分結界も持つようになってきたから守りつつ反撃or瞬間移動でいっか……ただあんまり大人数の場合瞬間移動できないから反撃しか選択肢が残らないけども……


 あとはー、水魔法はレベルあげたい。氷とか使えたら便利……涼しいし。地魔法もレベル上げたいかな……イメージ次第で土地を耕したり岩で塀とかも作れそうだし。

 火魔法と風魔法はまあまあでいいや。

 火魔法は森の中だと使いづらいもんね……それに自分のせいで火事は起こしたくない。


 「とりあえず使える魔法の確認からしておこうかな?」


 あまり使ったことのない水魔法|水刃《ウォーターブレード》を試しがてら少し遠いけど的にするにはかなり大きな木に向かって5割ほど魔力を込め魔法を放つ……これであの木にどれぐらいの傷が付くのかな?


 ギキャァア……ドスンッ……


「え?なに?なんで倒れたの」


-----


〈トレントの亡骸〉

 木に擬態し近づいてきたものに容赦なく攻撃する魔物。

 素材は丈夫で加工しやすい上に魔法の触媒にも使用できる。


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 どうやらただの木ではなくトレントだったようです。

 トレントってタネを飛ばしてきたりツタで拘束して絞め殺したり結構危険な魔物だったような。

 それに魔法……木に水属性でしょ?相性はあまりよくないはずなんだけども。魔力込めすぎたのかな……まぁ、倒してしまったものは仕方ない。


 「トレントの素材ってなにかと使えそうだよね。魔核はもらうとして木はかなり大きいけど……解体スキルでいけるかな?」


 ……いけましたー! ストレージに放り込んでおけば持ち運びも困らない。うんうん。いい拾いものだった。

 ちなみに調子に乗ってすぐそばのただの木に解体掛けてみたけど無反応。


 「うーん。木は木でも魔物だからよかったのか……」


 

 それにしても目視できるほど近くにいたのに攻撃されないなんて……女神の聖域展開中だったから気付かれなかったのかな?


 女神の知識で調べると……

 相手の探索スキルを女神の聖域が上回った結果、間近にいても感知されなかった。

 探索スキルが女神の聖域より上だった場合は簡単に発見される。

 女神の聖域レベルが上がりきっていない場合、魔の森中央付近にいる強い魔物には感知される可能性があるので注意が必要。


 コルドさんの追加機能のおかげでここまで詳しくわかるようになった。今度お礼の連絡しよう。


 ちなみにヒュージアントは探索スキル云々と関係なくたまたま結界に激突して怒ったみたい。


 「まぁ、いいや……ここだとさっきの音で魔物が寄ってくるかもしれないから移動してもう少し練習しよーっと」



 地図埋めも兼ね、少し奥の方に移動すると……


 「あっ、ここって……」


 流れる川のそばに大きめの屋敷らしきものとその周りに村の跡……家らしきものや畑だったであろう土地があった。

 こちらは両方ともかなり魔物に荒らされていたようでほぼ朽ち果てていたが……さすがに荷車とか背負子はなかったけど、使えるものは回収しました。石臼とかクワとかバケツとか……ちょっとくらいの傷や穴なら修繕でなんとかなるからね……ストレージに入れれば重さとか関係ないし……


 「いやぁ、たくさん拾いものもあったし……魔物とかが住み着いてなくてよかった」

 


 その後も初めて使う地魔法の威力を確認しようと放った魔法があらぬ方向へ飛んでいき……


「あ、しまった。誰もいなくて良かっ『ギャァアウ』え、また?」


 今度はブラッドベアでした。わ、わざとじゃないよ……うん。


 「今日はもうやめとこう……」


 その他は概ね問題なく小屋まで帰ってくることができた。

 



 風魔法の《そよ風ブリーズ》で涼みながら昼食にする。

 もぐもぐ……


 「あ、そうだ今日のトレントの枝を外に差しておこう」


 というのも森の中では全く時間がわからないので日時計を作ってみようと思って……異世界だから緯度も角度とかもわからないけど、一応日当たりの良い場所に円を書いてその中央にトレントの枝を刺してみた。おおっ、それっぽい。

 

 「まあ……大体でもわかれば御の字ってことで……これより自分の腹時計の方が正確な可能性は否めないけど」


 トレントの枝にしたのは心眼で丈夫だとなっていたからという点のみ。しっかり固定したので多少の力がかかっても問題ないと思う。

 トレントの枝がなかったらそこらへんの木の枝を使ったよね……



 午後は小屋で作業することが多い。

 ポーションを作って瓶に詰めたり、薬草を自分用とギルド用に分けたり、今日持ち帰ったクワやバケツを修繕したり……その内に室内が薄暗くなってきたので《ライト》を使う。



 夕食を食べ、腹ごなしに魔法の練習。

 娯楽もないし、歩き回って疲れたし……地図も小屋の周辺はだいぶ埋まってきた。

 圧倒的に元の世界より早寝早起きの健康的な生活だな……


 簡易シャワーで汗を流しサッパリして……ショルダーから出した手帳の写真をしばらく眺めた後、ベッドに入る。


 おやすみー……ぐーぐー……

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