第16話 女神見習い、新人冒険者になる(2)
「受付のカーラと申します。本日はどういったご用件でしょうか?」
「身分証を作りたいんですけど……」
これで出来ませんとか言われたらどうしよう……いや、門番のお兄さんに教えてもらったんだから大丈夫だとは思うけどね。
「かしこまりました。では、こちらにご記入と手数料として小銀貨1枚いただきます。記入できない場合は代筆もありますのでおっしゃって下さいね」
「大丈夫だと思います」
受付のカーラさんに小銀貨1枚を渡す。
すると、目の前にステータスプレートと同じようなものが現れた……どういう仕組みなんだろう?
カーラさんに渡されたペンで記入していく。
[氏名:エナ 種族:人族]
もちろん種族は女神(見習い)じゃなくて人族ですよ!
そのほかは任意だといいうのでとりあえず最低限身分証に必要な部分のみ記入した。
「はい、ありがとうございます。では、次にこちらに手をかざしてください。犯罪歴の有無を調べさせていただきますので」
言われた通りプレートに手をかざす。さっきの門と同じやつなのかな?
「はい、犯罪歴はないようですので……このまま手続きに入らせていただきますね」
「……犯罪歴があると登録できないんですか?」
「基本的にはそうなります。門でも調べたと思いますが、あちらは犯罪歴の有無のみで犯罪歴にもよりますが重罪の場合、捕まるか街への出入りを拒否されます。事前に調べておくことでトラブル防止も兼ねていてるんです」
「そうだったんだ……」
「こちらのプレートでは手をかざしていただいたときに魔力を識別し、その情報をカードに登録しています。ひとりひとり魔力が違うので、偽造のギルドカードも作れない仕組みなんですよ」
「へぇ……」
なんかこういうとこだけすごいよね……その能力をトイレにも活かしてくれたらいいのになぁ。
その間もカウンターの奥では記入内容や犯罪歴の有無などカードに転写している模様。
「はい、これで登録は完了です。紛失してしまった場合、再発行に銀貨3枚かかってしまうのでくれぐれもなくさないようにお気を付けください。こちらは身分証のみでなく冒険者のギルドカードとしても使用できますので、その際は受付で毎回提示してくださいね」
「はい、ありがとうございます」
「次にギルドの説明をさせていただきますね」
聞き逃さないようにしないと。
「お願いします」
「ギルドカードを登録をすると冒険者ランクというものが付き、最初はGランクから開始されます。基本的には依頼を受けて達成しランクを上げていく形になります。最低でも年に1度は依頼を受けていただかないとカードの身分証としての効力を失いますのでご注意ください。その際受ける依頼はランクさえあっていれば街のお手伝いでも採取でも構いません。依頼は自分のランクの2つ上まで受けることが可能ですが、依頼に失敗すると一定期間同じ依頼を受けられなくなったり罰金やランクダウンなどもございますのでご注意ください。それと、Gランクは見習いのようなものなので討伐依頼は受けられません。ここまではよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
「冒険者ランクは最高Sランクまでございますが、Sランクの冒険者はこの国に数えるほどしかおりません。基本的にAランク以上に上がることはほぼ皆無と考えていただければよろしいかと……そしてA、Bランクに上がるためにはギルドの審査がございます」
「審査ですか……」
上がれる気は全くしないけどね……
「A、Bランクつまり上位ランカーですね。上位ランカーになると指名依頼が発生するのでそれを任せることができるかの審査ということになります」
ああ、いくら強くても信頼がおけない人に指名依頼は任せられないってことか……問題のある人を昇格させてしまうとギルドの信用問題に関わるんだろうな。
「ちなみにA、Bランクに上がると依頼の報酬や素材の買い取り料金に上乗せがあったり、ギルドと契約の宿や食事処などで割引も受けられます……ギルドで働くことも可能ですよ」
おや?……ということはカーラさん、上位ランカーだったりして?
「あちらの掲示板に依頼書が貼ってあります。依頼にはさまざま種類があるので気になるものがあれば、受付で受けたい依頼を申請して開始となります。あとは魔物の討伐依頼の場合、討伐証明はギルドカードに自動的に記録されますので討伐部位などは必要ありません。ただ、討伐した魔物が常設依頼などの場合もございますのでこまめに確認することをお勧めします」
「はい」
「素材の買取はあちらの買い取りカウンターまでお持ちください。基本的にどちらの受付でも依頼報告が可能ですが……ほとんどの方が買い取りがあるときは買い取りカウンター、護衛依頼など報告のみの時はこちらのカウンターと分けていらっしゃいます」
「ありがとうございます。参考にさせてもらいます」
討伐証明がギルドカードへ記録されるようになったのは過去に大々的な偽装があったとかで、この仕組みで誤魔化せなくしたってことらしい。
いや、だから……その能力をトイレにも活かしてくれたらいいのに。
最後に渡されたカードはよくあるポイントカードぐらいのサイズの透明な板だった。カードには小さく〔G〕と透かしが入っている。
「ギルドなどに設置してあるプレートの上に置くと依頼内容や討伐記録などが表示されますので、確認したい時などに試してみてください。説明はこれで以上となりますが質問などはよろしいですか?」
「はい、たぶん大丈夫です。ありがとうございました」
「いえ、わからないことがあればいつでも聞きに来てくださいね」
早速、依頼書が貼られている掲示板を見てみることにする。
依頼はわかりやすいようにある程度同ランクにまとめて貼られていた。
ほとんどがEランク以上の依頼しか貼っていないなぁ……一応受けられるけど、初めてやるならGかFランクの依頼がいいな。
Gランクはお使いやお手伝い程度のものしかない……見習いらしいから仕方ないけど、せっかくなら冒険者っぽいものを受けてみたいなぁ。でも討伐依頼は受けられないって言ってたっけ……そもそも受けないけどね。
「おっ、これならいいかも」
掲示板を隅々まで目を凝らし、ようやく見つけた依頼書は
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【薬草の採取 ランクF 体力草 10本につき銅貨5枚 最低20本~ 】
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依頼書にはわかりやすく、薬草の絵が描いてあった。
「とりあえずこれ、やってみようかな。探すならしっかり特徴覚えとかなくちゃ」
依頼書の絵を目に焼き付けてから、再び受付の列に並ぶ……
ここの受付ってさ、中央に1列に並んで空いた受付に次の人がいくって感じなんだけど、そうなると受付してくれる人はランダムなわけで……並んでる人の中には明らかにやる気がなくなったり、もう1度並びなおそうとする人がいるんだけど、そういう人はだいたいスキンヘッドのおじさんに当たってる……なんでだろ? 頼りになりそうなのに。
順番が来たので受付に依頼書を持っていき、先ほどのカードも提示する。
おっ、さっきの受付の人だ。えっと……カーラさん。
「これお願いします」
「はい、こちら常設依頼なので期限などはございませんが、薬草が枯れてしまうと買い取り不可になってしまうのでお気を付けください。ちなみに常設依頼は依頼書を受付まで持ってこなくても受けることができますよ。あとこの部分に〔常設〕と記されていますので目印にしてくださいね」
あー、いちいち張りなおす手間を考えたらそうだよね……あ、ほんとだ。依頼書の隅に〔常設〕ってあった。
「わかりました。ちなみにこの薬草ってどこで採取できるか教えてもらうことは可能ですか?」
「こちらは、街の北門外の草原で採取できますよ。頑張ってくださいね」
かわいらしい笑顔で送り出され……あー、並びなおしてた人はこの笑顔が目的だったのかなと納得しつつ草原を目指す……
そうそう、門に入る時のチェックは割と厳しいんだけど街から出るときは特にチェックしないみたい。さすがに怪しい人には声かけるらしいけど。
さっきの強面な門番さんのいた門は西門らしいんだけど……北門でも木札を返すことができるか聞くと問題ないとのことなのでしっかり銀貨返却してもらったよ。お金って大事だもんね。
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