第317話 6対1...
「母さん...」
私は戦う母さんの姿を間近でよく観察した。
母さんと輪廻教徒達による戦いは熾烈を極め、遥か高みの勝負のように思えるのだが、なんでだろう?。
(なんか...、母さんが手を抜いているように見える...)
いくら6対1とは言え、賢聖の名を冠する母さんの実力がこの程度な訳がない筈なのである。
私と王様達を守ろうと防御魔法に集中しながら戦っているという点を含めたとしてももやはりおかしい気がしてならない。
苦しそうに息をあげながら魔神の攻撃に耐える母さんの姿はボロボロになりつつあった...。
兄さんもプラム先生も町の防衛に当たっている為増援に期待は出来ない。
私の後ろで震えている王様とパニラを見て自分も戦う覚悟を決める。
私がダッと駆け出した瞬間!、私の中から林華姉ちゃんが現れこう呟いた。
「お願い...、何もしないで...」
「姉ちゃん?、そこを退いて!」
私は姉ちゃんの制止を振り払おうとすると彼女は剣を引き抜いた。
「姉ちゃん?」
「だめ、絶対にこの先には行かせない」
「なんで?、姉ちゃんは輪廻教徒を倒すため私に剣術を教えてくれたんじゃないの?」
「違う、貴方が自分の身を守れるようにする為だけに教えた」
「...」
どうして?、このままだと母さんが死んでしまうかもしれない...。
あの眩しい笑顔を二度と見れなくなるのは苦痛でしかない。
「嫌だ...」
「カリン?」
「私は母さんを
そう叫びながら私が姉ちゃんを斬りつけて走り去る。
「とどめだエルカ」
魔神の咆哮が母さんを包み込もうとした瞬間!。
代わりに私の体が弾け飛んだ。
全身で強力な闇の魔力を浴びた私の体は酷く汚染され、光の申し子たる私の体を蝕む。
「カリンちゃん!」
今にも泣き出しそうな表情で私を抱え上げる母さんの姿を見て一安心する私。
「よかった...、私なんかの命で一瞬でも母さんが長生きできたのならこんな私にも価値があったって思えるから...」
私がそう呟いて目を閉じようとすると、母さんは意を決したようにこう呟いた。
「神法、女神の奇跡...」
瞬間!母さんの体が光輝き、私の中に無数の光入ってくる。
それはとても暖かく気が安らぐ様に感じた。
だけど...、それと同時に、何か心の奥底でドス黒い瘴気を感じる...。
(何?...この嫌な感じ...)
気持ち悪い...。
本当は明るくて優しい物のはずなのに親の愛情に気分が悪くなる。
外から光の優しさを得ると同時に、胸の内からドス黒い闇その物が這い上がって来るような感覚...。
光が止むと母さんは倒れ伏し、私の眼前に横たわるだが、その事に対して何も感じない...。
いや...、本来感じるべきはずの
一瞬何が起きたのか分からず戸惑っていると、輪廻教徒達が一斉に私に向かって跪いたので驚く。
「輪廻教徒一同...貴女様をお迎えに参りました」
「あっ...」
その言葉を聞いた瞬間、私の脳内に電流が走り抜ける。
今の一瞬で理解した自分の正体に思わず笑みが浮かぶ。
鏡に映るは生前の姿...。
『
黒くて長い髪を風に揺らしながら遠くを生気のない死んだ瞳で眺める中学3年生...。
全てを思い出した私は黒いドレスを自然風になびかせながら、斬りつけて来た林華姉ちゃんを見やる。
「久しぶり...林華姉ちゃん♡」
「華凛...」
姉は悟った様に輪廻教のフードを脱ぎ去る。
黒い髪をゴムで縛る姿が眩しい。
そんな姉の姿を見た私はニヤリと笑う。
「ようやく...、この世界を私達の理想郷に出来るね♡」
「させない!」
さっと走ってくる彼女は素早いが、
闇の魔力を扱い、彼女を簡単に拘束する。
地面からとめどなく溢れ出る黒いドロの様な物が彼女に纏わり付いたのだった。
必死に抵抗しようとする姉の姿はとても可愛い♡。
私は姉の唇に人差し指を添えながらこう呟くのでした。
「もうちょっと待っててね♡、私がお姉ちゃんを
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